製造
株式会社デンソー
「生成 AI を使わないことがリスク」という危機感に基づき
Microsoft 365 Copilot の本格活用に乗り出し、全社的な業務改革を推進
全社約 3万人へ Microsoft 365 Copilot 展開
「誰一人取り残さない」生成 AI 活用で企業価値を向上
自動車部品や CASE(※1)関連システムの開発・製造を行うグローバル企業として知られるデンソーは、「デジタルで誰ひとり取り残さない」という基本方針のもと、全社約 3万人の従業員を対象に Microsoft 365 Copilot を導入。あらゆる部署で生成 AI を活用した業務変革を推進しています。JBS の伴走サポートのもと、e ラーニング動画と研修を組み合わせたトレーニングを実施し、当初の目標とした月間利用率 85%を大きく超え、活用の定着を実現しました。
- 1 CASE:モビリティの変革を示す「Connected(コネクテッド)」「Automated / Autonomous(自動運転)」「Shared & Service(シェアリング)」「Electrification(電動化)」の 4つの領域を合わせて表した概念
【事業概要】
「環境」と「安心」への取り組みを通してモビリティ社会に新たな価値を提供
デンソーは、1949年の設立以来、受け継がれてきた行動指針「デンソースピリット ― 先進、信頼、そして総智・総力の精神」のもと、先進的な自動車技術、システム・製品を提供し続ける、グローバルな自動車部品メーカーです。
近年ではサステナビリティマネジメントに注力しており、2050年の持続可能な地域・社会の実現に向け、その中間時点となる 2025年までのアクションプランとして新たな「デンソーエコビジョン 2025」を策定。特に、脱炭素社会の実現に向けた環境に優しい技術や交通事故ゼロを目指す安全性向上のための製品にも力を入れています。
例えば、電動化技術や自動運転システムの開発を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。また、信頼性の高い製品と革新的な技術で、世界中の自動車メーカーから信頼されています。
【導入の背景】
経営トップの危機感から始まった生成 AI 活用への挑戦
デンソーは「2030年までにデジタル活用人材を 100%にする」という目標のもと、全社的な生成 AI 活用の体制づくりを進めています。
同社 デジタル活用推進部 デジタル人財変革室 人財開発 3課 担当係長の林氏は、「研究・開発や設計、営業、製造、経理など、社内の各部署のプロセスは相互に連携しているため、一部の組織や担当者に滞りが生じた場合、業務フロー全体のボトルネックとなる可能性があります。そこで『誰一人取り残さない』という覚悟を持ち、すべての従業員が幅広く生成 AI を活用できる環境構築を目指しています」と話します。
背景には、会社の将来に対する切迫した危機感もありました。
「生産年齢人口が減少し、事業を取り巻く環境が不確実性を増している状況下で、どうやって事業を持続的に発展させていくのか。『生成 AI を使わないこと自体がリスクとなる』という経営トップの認識から、この取り組みはスタートしました」(林氏)
こうして掲げたのが、「85%の従業員が生成 AI を日常的に業務で活用できるようにする」という野心的な目標です。もちろん、容易なことではありません。
株式会社デンソー デジタル活用推進部
デジタル人財変革室 人財開発 3課 担当係長
林 氏
そこで同社は、入力データが再学習に利用されない仕様により、情報漏えいリスクを低減できるというセキュリティ上の観点やビジネス基盤である Microsoft 365 アプリと連携できる点から、生成 AI 活用の基盤として Microsoft 365 Copilot(以下、Copilot)を選定。2023年10月より、まずは IT 部門を中心とした 300 人規模で先行利用を実施し、Copilot で何ができるのかを探りました。
次の段階として、2024年4月に全部署から生成 AI に高い関心をもつ従業員を募ってユーザーを 6,000人規模に拡大。約 3か月をかけて効果検証を行いました。
「さまざまな実務で Copilot を活用することでどれくらい効率化できるのか、具体的な事例をできるだけ多く集めることに注力しました。例えば製造現場においても、日中に行われた会議や打ち合わせをレコーディングし、Copilot で要約した議事録を作成することで、日勤と夜勤の担当者間での業務の引継ぎや、情報共有がスムーズになるといった効果を確認することができました」(林氏)
こうした成果を踏まえて同社は 2024年10月、いよいよ本社約 3万人の全従業員に向けた Copilot の展開に踏み切りました。
【JBS 選定の経緯】
サポートやコンテンツが充実した伴走サポートを評価
もっとも IT のスキルレベルも異なる全従業員に Copilot を展開し、生成 AI 活用の定着化を図るとなれば、これまでの検証フェーズとは比べ物にならない規模で、より広範かつ継続的なユーザー支援体制の構築が必要です。そこで同社は、この取り組みの伴走パートナーとして JBS を選定しました。
「当時、Copilot の活用・定着化に向けた支援サービスを用意している企業は数少なく、あるベンダーからは教育用の動画コンテンツなら提供できるという提案も受けましたが、3万人規模の従業員全員のリテラシーの底上げはさすがに困難です。そうした中、受講者のレベルに応じたコンテンツを圧倒的に充実させていたのが JBS で、当社のカスタマイズ要求にも柔軟に対応できるという回答をいただきました。また、JBS には別プロジェクトとして、Microsoft Power Platform(以下、Power Platform)を用いたアプリケーションの市民開発の全社拡大でもお世話になっている実績があり、生成 AI 活用についても充実した支援をいただけるという期待がありました」(林氏)
具体的に JBS は、どんなソリューションを提供したのでしょうか。JBS AIトランスフォーメーション事業本部 AI セールス部 の加賀 裕二はこのように説明します。
「デンソーさまのご要望を受け、e ラーニング動画と研修を組み合わせた Copilot の基礎知識、活用シナリオ、プロンプト座学などのトレーニングプログラムを編成し、提供させていただきました。なお、研修は一回あたり 50人を基準としていますが、部署ごとの都合も考慮しつつ、200人規模の研修にも柔軟に対応しています」
続けてデンソー デジタル活用推進部 デジタル人財変革室 人財開発 3課の髙木氏は、「私たちのチーム自身も、Copilot 活用を支援するポータルサイトの構築やユーザーコミュニティの立ち上げ、初心者向けの勉強会、デジタル EXPO という社内イベントを通じた情報発信や好事例の展開など、従業員が自発的に Copilot を活用したくなるための活動を行っています。JBS には、初心者向けの勉強会を支援していただいています。初心者向け勉強会は、参加者との双方向のコミュニケーションを大事にしているのですが、その点も講師の方に柔軟にご対応いただけて大変感謝しています」と話します。
株式会社デンソー デジタル活用推進部 デジタル人財変革室 人財開発 3課
髙木 氏
【導入効果】
「Copilot に聞いてみたら」のフレーズが社内に浸透するなど、生成 AI を積極的に活用する文化を醸成
現在、デンソーにおける Copilot の全社展開は定着化フェーズに移行していますが、ここでも JBS と緊密に連携した取り組みが進んでいます。
株式会社デンソー デジタル活用推進部 デジタル人財変革室 人財開発 3課 担当係長
近藤 氏
デンソー デジタル活用推進部 デジタル人財変革室 人財開発 3課 担当係長の近藤氏は、「例えば、毎月 4回開催している『なんでも相談会』の場を活用し、各部署のユーザーからの幅広い質問に答えているのですが、この活動でも JBS の伴走サポートをいただいています。アンケート結果も 5段階評価で平均 4.4 と、ユーザーから非常に高い満足度を得られています」と話します。
加えて、JBS が提供する利用状況可視化サービス「Copilot 診断」も、デンソー社内で活用されています。
「活用が進んでいる部署とそうではない部署が一目瞭然となりました。進んでいる部署の事例を横展開することで、部署間の格差を解消していきたいと考えています」(近藤氏)
こうした取り組みの結果、わずか 1年の短期間で目を見張る成果が生まれています。
「2025年11月現在、Copilot の月間利用率は当初目標の 85%を大きく超え、1回でも使ったことがある人まで含めれば 99%に達しています。仕事で何か困りごとがあれば、『Copilot に聞いてみたら』というフレーズが職場で聞こえるぐらい、生成 AI はあらゆる部署の業務に浸透しつつあります」(林氏)
特筆すべきは、製造現場での利用拡大です。Copilot のエージェント機能(※2)による Q&A の自動対応や作業要領書の作成など、自発的な活用が加速しているのです。
「こうしたエージェント機能の活用例として、ある製造現場では、班長が作業要領書を作成するプロセスにエージェント機能を活用することで、基本的な作業手順を入力すれば各担当者の詳細手順や留意すべきポイントを含む詳細なドキュメント作成を支援する仕組みが構築されています。現場の担当者自身によって、ここまで高度な生成 AI 活用による業務変革が進んだことは、非常にうれしく思います」(近藤氏)
こうした数々の成果が高く評価され、Copilot 導入プロジェクトを推進してきたチームは、IT 部門では異例とも言える社長賞を受賞するに至りました。
- 2 エージェント機能:ユーザーの指示に応じて、情報の生成や整理を自動で行う機能
【今後の展望】
グローバル約 16万人の従業員に向けて生成 AI 活用拡大に尽力
引き続きデンソーでは Copilot をベースとする生成 AI 活用を、さらに高度なレベルに進化させていく考えです。
「現在までの Copilot 導入プロジェクトを通じて、生成 AI 活用は単に既存業務を効率化するだけでなく、従業員一人ひとりの能力を拡張・強化するイネーブラー(※3)であることにあらためて気づかされました。この本質に目を向けた Copilot の活用拡大で、当社の企業価値向上に寄与していきたいと思います」と髙木氏は話します。
一方で大きな課題とするのが、生成 AI 活用の横展開です。デンソーが国内外に展開する連結対象子会社の総従業員数は約 16万人に及びます。デンソーは JBS とのパートナーシップをさらに強化し、「誰一人取り残さない生成 AI 活用」をグループ会社全体に拡大していこうとしています。
- 3 イネーブラー:目的達成を実現するためのプロセスを促進する人、役割、手段等を指す
株式会社デンソー
代表者:代表取締役社長 林 新之助本社所在地:愛知県刈谷市昭和町1 - 1
設立:1949年12月16日
従業員数:連結 158,056人、単独 43,781人
事業概要:先進的な自動車技術、システム・製品を提供するトヨタグループの自動車部品メーカー
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2026.03.12公開