DX 課題に対する包括支援事例

愛媛県西予市

自治体 DX 推進のビジョンと実現ステップを明確化した
「VISION2027」のロードマップを策定

西予市
業種 流通・サービス・公共・その他
テーマ
  • DX・内製化
  • クラウド活用

(左から)愛媛県西予市 政策企画部 デジタル推進課 デジタル推進係 係長 稲口 智博 氏、行政システム係 係長 清水 昭吾 氏、課長補佐 上甲 宏之 氏

自治体 DX 包括支援サービスを活用し
職員の働き方改革と身近な業務の DX 内製化を推進

愛媛県西予市は早くからクラウド活用に取り組み、現在では総務省が提示した β’ モデルを基本とした運用を行っています。この基盤の上で自治体 DX を推進していくことを目指していましたが、職員の IT 知識だけで取り組みを進めることに限界を感じていました。そうした中、JBS の自治体 DX 包括支援サービスを採用し、DX の方向性が正しいのかどうかのジャッジから、取り組むべき課題の整理、IT の利活用まで、DX 実現に向けた伴走型の支援を求めました。これにより、職員の働き方改革と身近な業務の DX 内製化を実現するとともに、将来のアジャイルな行政へとつなげていくための、西予市 DX 推進のロードマップを策定。現在、この構想を着実に実現していくためのステップを進めています。

【自治体の概要】
クラウド活用を見据えた IT 環境整備とオフィス改革を早くから推進

西予市についてご紹介ください。

愛媛県西予市 政策企画部 デジタル推進課 課長補佐 上甲 宏之 氏

愛媛県西予市 政策企画部 デジタル推進課 課長補佐
上甲 宏之 氏

西予市は愛媛県の西南に位置し、豊かな緑に覆われた美しい山々と、青く深く広がる海の変化に富んだ自然を有しています。その標高差は 1,400m に及び、リアス海岸から盆地、河成段丘、カルスト台地まで多様な特徴をもつ地形を生かし、愛媛県の名産品であるみかんをはじめ、海産物、米(宇和米)、ぶどう、いちご、栗(奥伊予栗)、柚子、椎茸、大根(大野ヶ原大根)、乳製品などを生産しています。

また西予市は、その大地の成り立ちを知り、大地が育んだ多様な自然や生態系、そこで暮らす人々の営みを丸ごと感じることができる「大地の公園」として、2013年9月に四国西予ジオパークとして日本ジオパークに認定されています。

早くからデジタルを活用した変革に取り組んできたと聞きました。

総務省は「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に基づき、各自治体に対して β’(ベータダッシュ)モデルと呼ばれる庁内ネットワークの運用基準を示しています。β' では、個人番号系、LGWAN(総合行政ネットワーク)系、インターネット接続系のいわゆる 3層分離モデルの中で、業務端末、文書管理、人事給与、財務会計などのシステムもインターネット接続系に配置することで、業務を効率化するモデルです。

西予市では全国の自治体に先駆け、2016年からクラウド活用を見据えた IT 環境整備に取り組み、すでに β’ モデルを基本とした運用を開始しています。これと並行して進めてきたのがオフィス改革と働き方改革です。

以前の西予市役所内では、紙の書類が多く残り、PC も有線 LAN につながれたデスクトップが大半を占めるなど、固定席を前提としたアナログな仕事が行われていました。
そうした職員の働き方を根本から変えるべく、2014年より新たなオフィスの空間づくりをスタート。2016年には、ペーパーレスを図り広々としたオフィスを実現するとともに、フリーアドレス制の導入で職員はノート PC を持ち歩き、無線 LAN 環境が整備された市役所内のどこでも打ち合わせや仕事ができるようになりました。今後に向けては、分散出勤やサテライトオフィスでの業務を可能とする ABW(Activity Based Working)を段階的に導入する準備も進めています。

【導入の背景】
オフィス環境の整備など “形 ” は整ったが庁内業務の DX は手探りの状態

オフィス改革や働き方改革を進めてきた背景には、どんな課題があったのですか。

他の地方自治体と同様に、西予市においても少子高齢化が早いペースで進行しており、これに伴う人口減少や人口構造の変化は、集落の消滅、社会保障費の負担増加、税収の減少による財政収支の悪化を招いています。

一方、人口減少に合わせた職員の削減を図らなければならない中でも、多様化・複雑化する住民ニーズに対応していかなければならず、職員の生産性向上が不可欠です。ルーティンワークを効率化してコストを下げる一方、地域を魅力的にするアイデアや地域の課題を解くアイデアなど、アウトプットを増やさなければなりません。

課題解決はほぼ達成されたと言えるのでしょうか。

生産性向上のためのオフィス環境の整備など “ 形 ” は整いましたが、庁内業務の DX はむしろここからが本番です。実のところ私たちはより大きな課題に直面していました。

たとえばクラウド活用の一環として、すでに一部の部局では Office 365 E3 の先行利用を開始しており、今後に向けては全庁レベルで Microsoft 365 E3 を活用することも予定していましたが、すべてが手探りの状態です。どこから手を付ければよいのかわからず、自分たちだけで DX を推進していくことに限界を感じていました。

私たちが進んでいる方向が正しいのかどうかを正しくジャッジし、取り組むべき課題を整理し、さらにオンプレミスとクラウドの双方の技術領域に精通して IT の利活用も支援してくれる、そんなパートナーを探していました。

愛媛県西予市 政策企画部 デジタル推進課 デジタル推進係 係長 稲口 智博 氏

愛媛県西予市 政策企画部 デジタル推進課 デジタル推進係
係長 稲口 智博 氏

愛媛県では県内団体における DX 人材を育成するため、専門知識を有するアドバイザーを派遣してリスキリング方針や研修プログラムの構築を支援しています。2023年2月、この DX アドバイザーから紹介をいただいたのが、JBS との出会いのきっかけです。

JBS に詳しく話を伺ってみたところ、Microsoft 365 をはじめとするマイクロソフト製品やクラウドに関する卓越した技術力と豊富な支援実績を有していることがわかりました。さらに心強く感じたのは、総務省のセキュリティガイドラインなども熟知していたことです。自治体の 3層分離ネットワークに課せられたさまざまな制約をクリアしつつ、いかにクラウドを活用して職員の生産性を向上していくべきなのか。私たちから質問を投げかけるよりも先に、JBS から課題を提示してくれました。

そんな JBS のノウハウをぜひ西予市にも取り入れたいと考え、自治体 DX 包括支援サービスを契約しました。

自治体 DX 包括支援サービスをどのように役立てましたか。

自治体包括支援サービスの契約期間は、2023年7月から 9月までの 3か月間です。短期間ではありましたが、JBS に伴走してもらったおかげで、西予市の DX 実現に向けたロードマップを策定することができました。また、JBS からの幅広いアドバイスや Q&A 対応を通じて課題の洗い出しと整理を行うことで、私たちが取り組むべきことや、Microsoft 365 の利活用の方向性も明確になりました。

【導入効果】
アジャイルな行政を目指したロードマップの策定により DX 実現の道筋が明確に

具体的にはどんなロードマップが策定されたのですか。

愛媛県西予市 政策企画部 デジタル推進課 行政システム係 係長 清水 昭吾 氏

愛媛県西予市 政策企画部 デジタル推進課 行政システム係
係長 清水 昭吾 氏

クラウドを活用して身近な業務のデジタル化を職員自身が主導していく、DX 内製化を目指すべき姿とするロードマップ「VISION2027」を策定しました。

前述したとおり、現時点は職員の働き方改革を実現するための環境を整えたばかりのステージ 1 にあります。2025年までのステージ 2 ではこの取り組みをさらに前進させ、よりフレキシブルな働き方(ABW)や職員間のコラボレーション強化、簡易な事務処理の効率化などを目指します。

これを基礎として職員による DX 内製化に着手し、2026年のステージ 3 では庁内事務の効率化を、2027年のステージ 4 ではアジャイルなアプリ基盤の構築と複雑な事務の効率化を目標としています。

その後もアジャイルな行政 DX の実現に向けて取り組みを進め、ステージ 5 として市民向けサービスの向上とそれを支えるバックエンドプロセスの変革、生成系 AI やクラウドネイティブなアプリ基盤の利活用を目指します。

また、このロードマップにおける具体的な施策として、Microsoft 365 を基盤としたクラウド活用に関する職員のリテラシー向上を図り、ノーコードツールを用いた市民向けオンライン申請や内部事務効率化アプリ内製化、デジタルに最適化したフローの見直し、アプリ間連携による自動化、AI と連携したデータ分析の自動化などを推進していきます。

ロードマップが策定されたことで、どんな成果があらわれていますか。

西予市 DX に向けた課題が整理され、目指すべき姿が示されたことで、各部局が年度ごとに何を実施していくのかが明確になり、職員一人ひとりの意識も大きく変わりました。

また、西予市がどのように変化していくべきなのか将来にわたるビジョンが描き出されたことで、上層部や議会に対する説明も明確になり、結果として必要な IT 基盤の調達や予算化といった政策面でも庁内が一丸となった連携が可能となりました。

【今後の展望】
コミュニケーションチャネルを拡大して市民に寄り添ったサービスを展開

今後の取り組みを教えてください。

ロードマップを策定することができましたが、より重要なのはそのステップを着実に実施していくことにあります。デジタル推進課としてもオンプレミス環境からクラウド環境への移行を目指すとともに、各部局の困りごとに対応する情報システム相談会や研修などを実施し、職員のリテラシー向上を後押ししています。

さまざまな庁内業務のオンライン化と効率化を進め、さらに市民とのコミュニケーションも拡大することでサービスの向上を図っていきます。

【JBS への評価】
西予市の取り組みを常に先読みした課題の洗い出しや解決策の提案を高く評価

あらためて JBS の導入支援・サポート体制に対する評価をお聞かせください。

西予市

JBS は西予市が取り組むべきことを常に先読みし、情報提供や課題の洗い出し、解決策の提案を行ってくれたのは非常にありがたかったです。また、JBS とのコミュニケーションはリモートで行われましたが、対面と変わらないフランクな雰囲気を作っていただいたおかげで、私たちも安心してさまざまな相談や質問を持ちかけることができました。

繰り返しになりますが、策定されたロードマップを着実に推進していく必要があり、JBS には引き続き私たちに伴走したサポートを期待しています。

JBS 担当者からのコメント

デジタルセールス本部 パブリックイノベーションセンター 小野 大介

西予市さまは、自治体の 3層分離のネットワークという制約の中でも世の中にある優れたテクノロジーを積極的に取り入れ、働き方改革、業務効率化を推進されていましたが、その中でもいくつか課題を持たれていることがわかりました。それらの課題を可視化し、対応時期も明確にすることでこれまでの取り組みをさらに加速させるためのロードマップを一緒に描くことができました。今後も、行政 DX 推進に熱意のある西予市さまに寄り添い、策定したロードマップ実現のために JBS の得意領域であるクラウド利活用等も推進していきたいと思います。

デジタルセールス本部 パブリックイノベーションセンター
小野 大介

愛媛県西予市

市長:管家 一夫
市役所所在地:愛媛県西予市宇和町卯之町三丁目434番地1
設置:2004年4月1日(東宇和郡の明浜町、宇和町、野村町、城川町、西宇和郡三瓶町の5町が合併して誕生)
職員数:824名(2024年4月1日現在)
概要:地方自治体

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2024.09.10公開

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