地域活性化企業人制度支援事例
北海道伊達市
住民サービス向上を見据えて庁内業務効率化を展開
国の指針の一歩先をいく自治体 DX を推進
業種 | 流通・サービス・公共・その他 |
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テーマ |
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(左から)北海道伊達市 総務部DX推進課DX推進係 係長 横浜 康弘 氏、柳田 邦夫 氏、主査 内田 岳志 氏、石尾 萌 氏、総務部DX推進課 課長 竹内 健太 氏
自治体の IT 推進を加速させる「地域活性化企業人制度」を活用して
JBS から出向した人材と CIO 補佐官とともに DX 基本計画を遂行
北海道の南西部、札幌市と函館市の中間に位置する伊達市では、人口減少が続き、地域経済の衰退は深刻な問題となっています。こうした現状を打破すべく取り組んでいるのが、民間企業と同様の時代感覚をもって、住民の利便性向上や行政サービス向上を目指す「自治体 DX」です。総務省の地域活性化企業人制度の活用と、CIO 補佐官を任命し、総務部DX推進課が緊密なタッグを組むことで、Microsoft 365 をベースとした最新のテクノロジーを活用した 3年間の DX 基本計画を推進しています。
【自治体の概要】
住民サービス向上に資する自治体 DX を推進
伊達市についてご紹介ください。
伊達市の地名は、1870年に仙台藩一門亘理の領主であった伊達邦成とその家臣が、集団移住して開拓した歴史に由来しています。北海道の南西部、札幌市と函館市の中間に位置し、工業都市の室蘭市や全国的に有名な温泉観光地の登別市、洞爺湖町などと隣接しています。特に内浦湾に面した伊達地域は、北海道内でも雪が少なく、日照時間も長いといった恵まれた気象条件をもち、「北の湘南」と呼ばれるほど、温かく暮らしやすい地として知られています。
ただ、ほかの自治体同様に、人口減少が大きな悩みになっています。2006年以降、若年層の人口が減少傾向にあり、その一方で 65歳以上の高齢者が増加傾向にあるなど、典型的な少子高齢化社会に向かっています。
ですが、ただ手をこまねいているだけでは、地域の経済がどんどん衰退していくばかりです。若年層の人たちがこの地で働きたいと集まり、子育てをして、老後も豊かな生活を過ごすことができる、そんな街づくりを行っていかなければなりません。
DX 基本計画の狙いも、その課題解決にあるのでしょうか。
地域の再興と活性化こそが、伊達市が推進する DX 基本計画の目標です。
自治体 DX というと、庁内の業務効率化が注目されがちですが、私たちは “ その先 ” を見据えています。業務効率化によって生み出されたリソースを有効に活用し、どんなメリットを住民に還元していくのか。住民サービスの向上に資する独自のデジタル基盤を、伊達市は先陣を切って整備していきたいと考えています。
【導入の背景】
JBS との間で「デジタル人材派遣受入に関する連携協定」を締結
伊達市が進める自治体 DX にはどんな特徴がありますか。
総務省が定めた「自治体 DX 推進計画」や「情報セキュリティポリシーガイドライン」などの国からの指示や、さまざまな支援策が整備されるのをただ待っていたのでは、伊達市が目指すデジタル化のレベルに到達するまでに多大な時間を要してしまいます。
実際、国が推奨する標準モデルにしても、その中身はすでに他の自治体で成功を収めた事例を焼き直したものがほとんどです。たとえば自治体 DX 推進計画でも行政窓口のワンストップ化が示されていますが、そもそも現在の住民から求められているのは、わざわざ市役所まで出向くのではなく、必要な情報がすべてスマートフォンに届き、各種手続きをどこからでも簡単に完結できるといった、そんな利便性をもったサービスです。
受け身の姿勢では、時代感覚を掴むことができません。特に人口減少が顕著な地方自治体では、国の指針よりも進んだデジタル化を実現しないと、この先、生き残ることができないでしょう。
自治体 DX において伊達市では具体的にどのようなアプローチをとっていますか。
民間企業でトレンドとなっている最新テクノロジーを積極的に取り入れたいと考えています。たとえば情報セキュリティに着目すると、民間企業ではゼロトラストの考え方が主流となっていますが、国が示す指針や基準はこれに追いついていません。自治体も民間企業と同様の発想を持たなければ、どんどん後れを取ってしまいます。
とはいえ、伊達市役所にそういった環境整備を自力で進めていける体制があるわけではありません。
そこで自治体 DX を加速させるノウハウをもったパートナー企業を探していた中、総務省の地域活性化企業人制度を利用し、JBS との間で「デジタル人材派遣受入に関する連携協定」を締結し、JBS でもエース級のデジタル人材に出向していただくとともに、CIO 補佐官にも着任してもらい、自治体 DX 実現の取り組みに伴走いただきました。これが功を奏し、伊達市は自治体 DX を大きく前進させることができました。
【JBS 選定の経緯】
マイクロソフト製品の知見を生かした、先を見越したクラウドネイティブな提案を評価
JBS とはどんな経緯で出会ったのでしょうか。
北海道伊達市 総務部DX推進課 課長
竹内 健太 氏
庁内業務の効率化と住民サービスの向上を進めていくためのクラウド基盤として、伊達市では Microsoft 365 に着目し、先進的な取り組みを行っている民間企業の事例を参考に導入を進めていました。
しかし、Microsoft 365 は豊富な機能を有するだけに、使いこなすためには高度なノウハウが要求されます。また、庁内業務をクラウド環境(インターネット接続系)で運用するためには、総務省が定義した「β‘(ベータダッシュ)モデル」に準拠したガイドラインの要件を満たす必要がありました。加えて、大前提として高度なセキュリティを確保するためには 24時間 365日の監視体制も整えなくてはなりません。
これらの課題をどうやって解決すべきか、付き合いのあるリセラーに相談したところ紹介されたのが JBS でした。
CIO 補佐業務を JBS に委託した決め手を教えてください。
複数のベンダーに打診しましたが、「伊達市の CIO 補佐官に着任し、DX推進課の取り組みを伴走サポートしてほしい」という私たちの要望に対して、唯一前向きな姿勢を示してくれたのが JBS でした。他社は残念ながら庁内業務のクラウド移行に懐疑的で、サポートはするけれど人材は出せないという姿勢だったのです。
さらに、他社からはオンプレミス製品の提案がほとんどだった中、JBS からはクラウドネイティブな庁内業務や住民サービスの実現に向けた自治体 DX のあるべき姿を提案していただき、伊達市の未来構想をともに描いていけるパートナーだと判断しました。
加えて JBS を高く評価したのが、自治体 DX 推進の裏付けとなる豊富な実績と技術力です。Microsoft 365 の上級認定資格をもった技術者を数多く擁し、JBS 自体も「Microsoft Partner of the year 2024」において数々のアワードの連続受賞記録を 12年に延ばすなど、マイクロソフト製品を熟知していることに大きな安心感がありました。
【DX 基本計画の推進状況】
2023年度から 3か年の DX 基本計画を推進中
JBS とともにどのような形で DX を推進しているのですか。
JBS の CIO 補佐官が着任したのは 2023年6月で、ともに描いたグランドデザインに基づき次のような 3か年の DX 基本計画を進めている過程にあります。
初年度の 2024年3月までは、DX推進課のメンバー自身が Microsoft 365 に関する知識やスキルをしっかり身に付けるためのリテラシー教育を行っていただきました。将来的に庁内と庁外(住民向け)の両面で Microsoft 365 を展開していくうえで必要となるセキュリティの運用体制や、職員に配布するPCの適切なキッティングや設定に関することが、そこでの主な内容です。
2年目の 2024年度は、庁内業務の変革を見据えた一般職員の研修を行っています。たとえば Microsoft Power Platform などに関する研修を、すでに複数回にわたって実施しました。
また、伊達市では 2022年4月から、スマートフォンなどのモバイル端末を利用して市税や各種料金などを納付できる電子決済(通称:スマートフォン決済)を導入しており、これに関連するワークフローをMicrosoft 365 に実装することで、庁内業務の効率化を実現したいと考えています。
そして 3年目の 2025年度には、Microsoft Power Platform に関して高まった各部局の職員のスキルを生かし、住民向けのさまざまなアプリ開発を内製化していきます。
【導入効果】
DX推進課のマンパワーを本来の使命であるデジタル変革に集中
現時点での成果を教えてください。
現在は基本計画の途中段階にあり、目標とする自治体 DX の実現には至っていませんが、庁内業務の効率化に関しては、すでに多くの成果があらわれています。
たとえば職員に配布する PC のキッティングや設定作業に、これまで DX推進課では多くの手間と時間をかけていたのですが、Microsoft Intune を活用した自動化により、工数をほぼ半減することができました。
また、セキュリティ面に関しても JBS のサポートを受けながら、市役所内における IT 利用環境のハイジーン(衛生管理)を徹底し、職員が Excel 上などに勝手に作成して放置されたままになっている、いわゆる「野良マクロ」なども一掃しています。
さらに、用途が同じでありながら別のアプリを導入していたライセンスを整理するなど、コスト削減も進めることができました。
こうした JBS の数々の貢献もあり、DX推進課の限られたマンパワーを、本来の使命であるデジタル変革に振り向けることが可能となりました。
【今後の展望】
アプリ内製開発を通した住民向け DX の取り組みを強化し、サービス品質の向上を目指す
今後の取り組みを教えてください。
DX 基本計画は順調に進んでおり、職員のリテラシー向上にも目途が立ちました。
これを土台にさまざまな庁内業務のクラウド移行を促進するとともに、Microsoft SharePoint を活用した公文書管理システムの構築も検討しており、マイクロソフト製品の有効活用を目指します。さらに Microsoft Power Platform を活用したアプリの内製開発を活発化させることで、本丸とする窓口業務のオンライン化や庁外への情報発信の強化など、住民向け DX の取り組みを加速していきます。
【JBS への評価】
最新技術の動向や活用ノウハウの伝授も含めた伴走サポートを期待
あらためて JBS の導入支援・サポート体制に対する評価をお聞かせください。
CIO 補佐官と合わせて伊達市の職員として出向していただいた JBS のエキスパートによる、親身で手厚い技術サポート、リテラシー教育にもとても感謝しています。おかげで伊達市は、DX 基本計画を軌道に乗せることができました。
Microsoft 365 の活用のあり方についても、JBS との日々のコミュニケーションを通じてその “ 奥深さ ” を知り、ますます大きな可能性を感じています。AI アシスタントの Microsoft Copilot など新機能も次々に登場しているだけに、JBS には引き続き、最新技術の動向や活用ノウハウの伝授も含めた伴走サポートを期待しています。
JBS 担当者からのコメント
本件は、伊達市さま JBS の双方にとって初の試みであり、お互いに暗中模索でスタートしていたと思います。ただし、伊達市さまから DX を強力に推進するというかなりの熱量をすぐに感じましたので、ツールを入れておしまいではなく文化の醸成も含めた 3年間の計画を早急に作成し、課題認識や目指すべき姿の共有をしました。まずは 3年としましたが、世の中は日々変化していきますのでその時々でベストな提案やアドバイスをできるよう心掛けていきます。
デジタルセールス本部 パブリックイノベーションセンター プリセールス課
田島 崇暁
北海道伊達市
市長:堀井 敬太
市役所所在地:北海道伊達市鹿島町20-1
設置:2006年3月1日(大滝村と飛び地合併で新・伊達市が誕生)
職員数:295名(2024年4月1日現在)
概要:地方自治体