金融・保険
株式会社りそなホールディングス
JBS のプロジェクトマネジメントと Microsoft Power Platform による
ローコード/ノーコード開発でシステムを短期開発
りそなグループ キャッシュレス戦略の主要サービスを支える
バックヤード業務のシステム化を Microsoft Power Platform で迅速に実現
りそなグループでは、かねてより個人・法人のキャッシュレス化に力を注ぎ、2011年からりそなデビットカードを 2018年にはりそなビジネスデビットカード、法人加盟店にキャッシュレス決済を提供する「りそなキャッシュレス・プラットフォーム」をローンチしています。矢継ぎ早にサービス提供を実施する半面、バックヤードでは社員の手作業での業務も多数残存しており、業務の効率化に向けて、JBS を開発パートナーとして選び、ノーコード/ローコード開発ツール「Microsoft Power Platform」を使ったシステム作りを進めました。これにより、業務工数を大幅に削減させるシステムを短期間で構築しました。
【事業概要】
「金融+で、未来をプラスに。」 家計・商流に寄り添った決済ソリューションに注力
りそなホールディングスは、りそな銀行をはじめ、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、みなと銀行などを傘下に置く持ち株会社です。同社が組織するりそなグループは「金融+で、未来をプラスに。」というパーパスを掲げ、長期ビジョンとして「リテール No.1」を目指しています。
そうした中、個人のお客さまの家計・法人のお客さまの商流に寄り添ったソリューションを提供する取り組みとして、キャッシュレス化の事業に力を注いでいます。2017年に決済事業部(現 DX個人部・DX法人部)を立ち上げ、2018年には法人・個人事業主のお客さま向けの「りそなビジネスデビットカード」や法人加盟店向けにキャッシュレス決済をワンパッケージで提供する「りそなキャッシュレス・プラットフォーム」(以下、RCP)のサービス提供を開始。2019年には個人のお客さまの普通預金のキャッシュカードと一体型となった「りそなデビットカード」を標準搭載するサービスを始動させるなど、キャッシュレス市場の拡大とともにビジネスを拡大してきました。
りそなグループの決済ビジネスについて、DX個人部 DXマネジメント室長の井上 知司氏は「我々の決済ビジネスの特色は、単に機能を提供するだけではなく、家計や商流に入り込み、お客さまのこまりごとを解決するソリューション提供を目指している点です。個人のお客さまに対しては『りそなグループアプリ』を起点としてクレジット・デビットカードの利用状況がすぐにわかるようにしていますし、法人・個人事業主のお客さま向け加盟店サービスも銀行本体で提供しています。個人・法人のデジタル戦略を考える部署で、カードのアクワイアリング業務(※1)やイシュイング業務(※2)を担い施策のスピードをあげられるようにしています」と説明します。
こうした特長もあり、りそなグループの決済ビジネスは堅調な拡大を続け、りそなデビットカードの発行数は 2025年3月時点で 300万枚に達しています。また、決済関連の年間収益も 2025年3月期で前期比 5.4% 増の 825億円へと拡大しています。
株式会社りそなホールディングス DX個人部 DXマネジメント室長
井上 知司氏
- 1 アクワイアリング業務:加盟店に対する営業、決済端末の設置、加盟店の審査・管理、売上金の管理などの業務を指す
- 2 イシュイング業務:カードの発行、請求金額・未収金の管理、決済進捗の管理などの業務を指す
【導入の背景】
ビジネスの拡大を背景に決済サービスを支えるバックヤード業務の効率化が急務に
決済ビジネスが堅調に拡大するなか、同ビジネスを推進する業務の現場では、業務のシステム化・効率化が大きな課題になりました。
当時の状況について、井上氏は「例えば、イシュイングにおいては、不正なカード利用への対応や未収金の管理といったリスク管理系の業務があり、また、アクワイアリングにおいても『加盟店の審査』といった管理業務があります。これらのバックヤード業務は以前、システム化が進んでおらず、表計算ソフトなどを使った手作業中心で管理していました。ゆえに、手間がかかるうえに属人化も進行し、改革が必要でした」と説明します。
また、りそなホールディングス DX法人部 DXデザイナーの板橋 幸平氏は、次のように補足します。
株式会社りそなホールディングス DX法人部 DXデザイナー
板橋 幸平氏
「私は当時、アクワイアリングにおける加盟店審査業務の企画・管理を担当していましたが、そのプロセスはとても煩雑で、審査担当者は複数の Excel を同時に開き、作業をこなす必要がありました。また、リアルとオンラインのさまざまなチャネルから加盟店サービスへの申し込み情報が来るほか、審査業務では社内外の多様なデータベースに照会をかけなければなりませんでした。RCP の提供や決済プラットフォーマーのデジタルガレージとの提携(※3)などにより、法人のお客さま(加盟店)がハイペースで増えていくなかで、こうした業務の煩雑性を解消し、効率化を図ることが必須と考え、申し込み情報の統合や照会ファイルの一括生成などを主目的にしたシステム化を企画しました」
- 3 デジタルガレージは 2025年9月より、りそなホールディングスの持分法適用関連会社になっている
業務の煩雑性は、イシュイングにおけるバックヤード業務についても同様でした。この点について、りそなホールディングス DX個人部 DXマネジメント室の山口 雄也氏は次のように明かします。
「カードの不正利用への対応や未収金の管理といった業務では、以前まではお客さまの取引詳細を管理するファイルを Excel ベースで管理しており、それぞれのデータを紐づけるのが難しく、必要な情報を検索するのに相当の手間がかかっていました。ゆえに、データの構造化を目的にしたシステム作りが必要でした」
井上氏によれば、こうしたシステム化に対する業務現場のニーズが、結果的にノーコード/ローコードでのシステム開発を可能にする「Microsoft Power Platform」(以下、Power Platform)と、JBS による開発支援サービスの採用につながりました。
株式会社りそなホールディングス DX個人部 DXマネジメント室
山口 雄也氏
【JBS 選定の経緯】
業務への理解とニーズに寄り添った支援を評価し、JBS を開発パートナーに選定
りそなグループでは通常、社内業務システムは、システム部門が企画・開発を担います。ただ、システム部門は数多くの案件を抱えており、アクワイアリングやイシュイングのバックヤード業務のシステム化にリソースが割けず、システムの開発に相当の期間がかかることが予想されました。
板橋氏は「我々には可能な限り早期に業務のシステム化を図りたいという願望がありました。そこで、システム部門に開発を一任するのではなく、ノーコード/ローコード開発ツールを使いながら、我々主導で自分たちの欲するシステムの開発や保守を推進しようと決断しました」と話します。
この決断のもと板橋氏は、自分たちのニーズにフィットするノーコード/ローコード開発ツールを探し、選択したのが Power Platform です。その理由について、りそなホールディングス DX個人部 DXマネジメント室 DXデザイナーの可部谷 和希氏はこう明かします。
株式会社りそなホールディングス DX個人部 DXマネジメント室 DXデザイナー
可部谷 和希氏
「ノーコード/ローコード開発ツールを使えば、システムの立ち上げがスピーディーになり、自力でシステムを開発するのは無理としても、簡単な保守ならば自分たちだけで行えるようになると考えました。ツールの選択肢は他にもありましたが、りそなグループが標準的に使用しているマイクロソフト製品との親和性の高さから Power Platform を選びました」
こうして Power Platform の使用を前提にシステムの要件定義を協力会社とともに行い、2024年4月にその作業を終えました。のちの 2024年6月から、システム開発の実務を担うパートナーの選定に入りました。
板橋氏は「Power Platform を採用した究極的な目標はシステム開発の内製化にあります。ただ、このツールがいかに扱いやすいとはいえ、IT の専門家ではない我々が、いきなり自分たちの欲する業務システムをスピーディーに開発できるとは考えにくく、IT のプロに設計・開発の実務を担ってもらうのが安全で確実と考えました」と打ち明けます。
そうした IT のプロを選り抜いた結果として選ばれたのが JBS でした。採用の決め手について可部谷氏は「JBS には、りそな銀行における別案件でシステム開発を支援してもらった実績があり、銀行の業務や、我々が実現したいことへの十分な理解、さらにマイクロソフト製品の知見がありました。加えて、システムのプロトタイプをクイックに作りレビューと改善を重ねながら要件を合意していくというアジャイル的な進め方や、それにもとづくプロジェクトのスケジューリングに具体性や納得感があり、その点も高く評価しました」と説明します。
【導入効果】
計画どおりにシステムを完成させ、抜本的な業務効率化を実現
板橋氏、可部谷氏は、JBS による支援のもと 2024年8月からシステムの開発に着手し、2025年4月にシステムを完成させ、カットオーバーしています。
板橋氏は「開発のスケジュールは非常にタイトでしたが、JBS はプロトタイプを都度提示しながら、業務担当者と密接にコミュニケーションを取り、彼らのニーズへの理解を深めてシステムをブラッシュアップしていきました。そうした現場に密着した JBS の支援のおかげで、我々の意図したシステムが予定どおりに完成させられたと見ています。また、我々が決めたシステムの方向性に関して、JBS 側のプロジェクトリーダーが『それをどう実現するかは、JBS が責任をもって検討し、かたちにします』と言い切っていただけたので、強い信頼感をもって開発を一任することができました」と評価します。
続けて可部谷氏も「イシュイングのバックヤード業務の担当者は、りそな銀行の大阪本社で業務しており、意思疎通には難しさがありました。それでも JBS は、タスクの優先順位を適切につけながら、プロジェクトの進捗を巧みにコントロールいただけました。そうしたプロジェクトマネジメントの能力の高さは特筆に値すると思います」と述べています。
こうして作り上げられたアクワイアリングとイシュイングのための新たな業務システムは、業務の効率化に大きく貢献しています。
りそなホールディングス DX個人部 DXマネジメント室の高橋 龍司氏は「今回開発したシステムにより、アクワイアリングにおける審査業務が大きく効率化され、工数が以前の約 30%削減されました」と話します。また、可部谷氏は「未収金の管理などに必要な情報が以前よりはるかに簡単に検索できるようになり、イシュイングのバックヤード業務の工数が約 30%削減されています。その削減分をより付加価値の高い業務に振り向けることで、さらに効果が生み出せると期待しています」と明かします。
株式会社りそなホールディングス DX個人部 DXマネジメント室
高橋 龍司氏
【今後の展望】
システムを継続的に強化し、グループ各社への横展開も視野に入れる
りそなホールディングスでは、今後も Power Platform を使い、アクワイアリング、ならびにイシュイングを支える業務システムを強化していく考えです。
高橋氏は「アクワイアリングの業務システムについては、これからも JBS の支援のもとで、さまざまな機能強化を予定しています。加えて、アクワイアリングの業務を行っているグループ内の銀行は、りそな銀行以外にもありますので、今回開発したシステムをそうしたグループ会社に横展開していくことも視野に入れています」と抱負を語ります。
また山口氏は、Power Platform 活用の今後について次のように展望しています。
「イシュイングを支える業務システムについても、Power Platform を活用しながら保守・改善を継続的に図っていきます。また、今回のシステムは、個人のお客さまの管理にフォーカスを絞りましたが、今後は、法人のお客さまを管理するためのシステムを開発し、大阪のイシュイング担当チームにとってより使い勝手の良い仕組みを提供していきます。その際には、JBS にはこれまでと同様の手厚い支援を期待しています」
株式会社りそなホールディングス
代表者:取締役兼代表執行役社長兼グループ CEO 南 昌宏所在地:東京本社:東京都江東区木場 1丁目5番65号 大阪本社:大阪市中央区備後町 2丁目2番1号
設立:2001年12月12日
従業員数:連結 20,174人 単体 1,974人(2025年3月末現在)
事業概要:グループ各社の経営管理、ならびに付帯/関連業務、銀行法により銀行持株会社が行うことのできる業務
2025.12.11公開