製造
株式会社デンソー
全社の知見を業務に活かすべく、専門 AI を一つの窓口に集約し、
迷わず、迅速にナレッジへたどり着ける環境を構築
専門 AI を束ね、必要な知見へ迷わず到達
マルチエージェント「DAIKU」で全社のナレッジ活用を加速
自動車部品世界大手の株式会社デンソー(以下、デンソー)は、創業以来 75年以上にわたり各部門やベテランの中に蓄積されてきた技術・ノウハウを、デジタル・AI の力で全社的な資産としてつなぎ直す取り組みを進めています。その中核を担うのが、社内に点在する個別の専門 AI を束ねるマルチエージェント「DAIKU」(ダイク)です。世間一般でマルチエージェントの実装方式が定まっていない中、この技術の構想段階から伴走支援を担うパートナーとして JBS を選定。既存の AI 資産を活かすとともに、適切なアクセス権を維持しながら、担当者が業務で必要とするナレッジに迷わず、迅速にたどり着ける環境づくりを進めています。
「DAIKU」に携わる皆さまへのインタビュー動画を公開中!
分散したナレッジをどう活用するかという課題に AI でどう取り組んだのか。ぜひご覧ください。
【事業概要】
AI 活用の民主化を進めるグローバル自動車部品メーカー
デンソーは、先進的な自動車技術やシステム・製品を提供するグローバルな自動車部品メーカーです。エレクトリフィケーションシステムやパワートレインシステム、サーマルシステム、モビリティエレクトロニクスなど車載事業を中核としながら、インダストリアルソリューションやフードバリューチェーンといった非車載事業にも領域を広げています。
そうした中で注力しているのが、デジタル人材育成です。「誰一人取り残さない」という覚悟のもと、すべての従業員がデジタル・AI を活用できる環境構築を目指しています。
【導入の背景】
分散する知見と暗黙知を、全社で活かせる資産へ
デンソーは、創業以来 75年以上にわたる製品開発やモノづくりを通じて、一人ひとりが蓄積してきた技術やノウハウ、経験などを、競争力の源泉と捉えています。
ただ、それらのナレッジは各部門のシステムや文書に分散していたり、ベテランの暗黙知にとどまっていたりと、うまく活用できない状況が続いていました。一方、事業環境の変化に伴う組織統合などによって、これまで携わったことのない製品や工程を、従業員が短期間で担当しなければならない場面も増えています。
このことから、過去の知見を速やかに参照し、前任者やベテランの経験を引き継ぐことができる環境づくりが急務になっていました。そうした中で立ち上がったのが、「DAIKU」(ダイク)と命名されたマルチエージェント構築プロジェクトです。
同社 デジタル・AI変革推進部 キャリアエキスパートの加藤 滋也氏は、「社内では Microsoft Power Platform を用いた市民開発や、Microsoft 365 Copilot を中心とした生成 AI の活用が進み、個人の業務改善という土台は着実にできつつあります。DAIKU はその延長線上に位置するもので、各部門が保有するナレッジを組織横断でつなぎ、事業判断や品質の向上、期間短縮に役立てることを目指しています」と、その概要を説明します。
なお、DAIKU という名称は、「DENSO AI」と「Knowledge Utilization」の頭文字から成る造語で、あたかも職人である“大工”が道具を上手に使い分けるように「個々の専門 AI ツールを使い分けてほしい」という思いと、「デンソーならではの一軒家を作ってほしい」という思いが込められています。さらに加藤氏は、「ゆくゆくは全社のあらゆるナレッジがつながり、ベートーヴェンの交響曲“第九”のような、壮大なオーケストレーションができる仕組みを実現したいと考えています」と、将来像を語ります。
株式会社デンソー デジタル・AI変革推進部
キャリアエキスパート
加藤 滋也 氏
もっとも、DAIKU の構築においては、さまざまな障害が待ち受けていました。デジタル・AI変革推進部 プロセス変革共創室長の須賀 洋文氏は、「ユーザーが必要とするナレッジを、いかにして 1つの入口から取り出せるようにするのか。さらに、複数のシステムに分散したさまざまなナレッジを連携させつつ、一人ひとりの担当者が参照を許可された範囲だけを適切に活用できるよう、アクセス権を確実に管理することが最大の難所となります」と課題を示します。
【JBS 選定の経緯】
構想が固まらない段階から、技術と進め方を具体提案した JBS を高く評価
株式会社デンソー デジタル・AI変革推進部
プロセス変革共創室長
須賀 洋文 氏
デンソーは DAIKU の構想を着実に具現化すべく、技術調査から設計、実装、運用まで一貫して伴走支援を行うパートナーとして JBS を選定しました。
両社は、Microsoft Power Platform や Microsoft 365 Copilot の社内展開でも、共にプロジェクトを推進してきた経緯があります。その取り組みを通じて、すでにデンソーの業務や基本方針を深く熟知していた JBS に、まず白羽の矢が立ったのです。
「2025年当時、私たちには AIを活用したシステム開発の知見が十分になく、実現したい目標はあっても、そこに到達する手法やプロジェクトのロードマップを描けていませんでした。そのような、まだ構想そのものが固まっていない段階で複数ベンダーに相談を持ち掛けたところ、具体的な技術と最適な進め方を提案していただいたのが JBS でした」(須賀氏)
【導入効果】
権限を守ったナレッジ横断により、検索時間を約半分に短縮
DAIKU 構築プロジェクトは、まず小規模な検証環境で効果を確かめる方針が取られました。マルチエージェント技術がまだ黎明期にあった 2025年当時、JBS は最新技術を調査し、複数の方式を比較しながら、それぞれのメリット・デメリットを説明。そのうえで、DAIKU の目的に最も適した方式を共同で選定しました。
こうして始まった PoC(概念実証)では、最小限の専門 AI とダミーデータに加え、電動システムと内燃機関の開発を担うパワトレインシステム事業グループの実データを用いて検証を実施しました。
主な確認項目は、「質問に適した専門 AI の選択」「複数回答の整理・統合」「アクセス権限に応じた回答」「閲覧不可情報の除外」「実務で有用な回答の生成」そして「利用者が想定していなかった専門 AI からも新たな気づきを得られるか」です。
デジタル・AI変革推進部 プロセス変革共創室 AI活用推進課長の堀部 宗尚氏は、「30件程度の質問を DAIKU に投げかけたところ、約 9割で有用な回答が得られました。加えて、こちらが想定していなかった専門 AI からも回答が返り、新たな気づきが得られました。これはマルチエージェントならではの価値だと感じています」と、手応えを語ります。
株式会社デンソー デジタル・AI変革推進部
プロセス変革共創室 AI活用推進課長
堀部 宗尚 氏
一方で明らかになったのは、マルチエージェントの仕組みが適切に動いたとしても、接続先の専門 AI の回答品質が低ければ、最終的な回答の価値も低くなってしまうことです。
この課題を踏まえて臨んだ次のフェーズでは、パワトレインシステム事業グループもプロジェクトメンバーに参画。監査業務や生産準備など、具体的なユースケースに焦点を当てて検証した結果、ナレッジの検索品質は大きく改善しました。
株式会社デンソー パワトレインシステム事業グループ
パワトレインDX推進室長
植田 大治 氏
パワトレインシステム事業グループ パワトレインDX推進室長の植田 大治氏は、「10数名のメンバーによる検証では、DAIKU の検索時間が、自力でのナレッジ検索や Microsoft 365 Copilot の利用時と比べて約半分に短縮され、より精度の高い調査が可能になることを確認できました」と話します。
この成果を受け、DAIKU は同グループ内の 1事業部にて、全担当者を対象とした実運用を開始しています。
「必要なマニュアルや規定をまとめて検索でき、全社規定との整合性確認にも活用できています。現場からは、接続対象の専門 AI のさらなる拡充を望む声が上がっています」(植田氏)
そして、もうひとつ特筆すべき成果が、「既存の複数の AI プラットフォームとも連携しながら、アクセス権限を守れるか」という従来からの懸念の解消です。
「当社では Microsoft Entra ID を用いて、各システムに対するアクセスの認証・認可を行っています。JBS には、この仕組みと当社独自の運用形態を踏まえた権限制御方式を調査・提案していただき、ユーザーごとに閲覧可能な情報だけを用いて回答する仕組みを構築することができました。技術的にも非常に複雑で、社内事情を深く理解する JBS と共に取り組んだからこそ実現できたと考えています」(須賀氏)
【今後の展望】
品質・安全、他事業部、海外へ DAIKU の活用領域を拡大
デンソーは今後、DAIKU が対象とするナレッジと利用部門を段階的に拡大する方針です。パワトレインシステム事業グループ以外の事業部門に加え、グローバル拠点への展開も視野に入れています。
「今後は生産領域の基準や規程にとどまらず、品質や安全などの業務にもナレッジの活用範囲を広げ、より多くの事業部門で使えるマルチエージェントに育てていきたいと考えています」(植田氏)
一方、DAIKU の利用拡大を進めていくうえでは、生成 AI の導入そのものを目的にせず、改善すべき業務と具体的なユースケースを明確にすることが重要です。
「初めから大規模で複雑な仕組みを目指すのではなく、効果と信頼性を確認できる領域から着実に始めることが大切です。そこで得た知見を次のユースケースに活かすことで、現場に定着する仕組みへと成長させられると考えています」(堀部氏)
実際、DAIKUはリリース後の 2~3週間で約 1,200件の検索が行われるなど、利用は順調に広がっています。
「現場と IT の双方の視点を持ち、さまざまな業務部門と密に連携しながら、AI ありきではなく、『どの業務に、どのようなナレッジを役立てるか』を見極めていきたいと考えています」(加藤氏)
その実現に向け、須賀氏は「対象部門や海外への展開が進めば、ナレッジの種類やアクセス権限もさらに複雑になります。JBS には、導入・運用を支えていただくだけでなく、進化の速い生成 AI の最新動向を踏まえ、私たちだけでは気づけない選択肢や、最適な進め方を引き続き提案していただきたいと思います」と期待を寄せています。
株式会社デンソー
代表者:代表取締役社長 林 新之助本社所在地:愛知県刈谷市昭和町1 - 1
設立:1949年12月16日
従業員数:連結154,716人、単独43,889人
事業概要:先進的な自動車技術、システム・製品を提供する、グローバルな自動車部品メーカー
インタビュー動画公開中
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複数の専門AIを統合したマルチエージェントを構築するにあたり、JBSがどのような支援を行ったのか、「DAIKU」に携わる皆さまに語っていただいています。ぜひご覧ください。
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2026.11.02公開