モダナイズ構想と業務アプリの進化事例

株式会社ゼロ

アプリ開発と車両陸送情報の統合管理で
紙ベースの業務フローから脱却

モダナイズ構想と業務アプリの進化事例 株式会社ゼロ
業種 流通・サービス・公共・その他
テーマ
  • DX・内製化
  • アプリ開発
製品パートナー マイクロソフト

(左から)株式会社ゼロ グループ戦略本部 DX戦略室 室長 佐野 彰宏 氏、 辻本 悠香氏、主任 須釜 正憲 氏、川瀬 峻輔 氏

業界に先駆け、車両陸送の状態をチェックする「車両お預かり書」をデジタル化
社内業務の DX 化の大きな一歩として経営のターニングポイントに

株式会社ゼロ(以下、ゼロ)は、日産自動車の子会社として 1961年に日産陸送株式会社が設立され、2001年に日産自動車より独立して株式会社ゼロへ社名変更をした、陸送業界のリーディングカンパニーです。陸送業では業界トップクラスの規模となっており、年間約 350万台を超える陸送業務を請け負っています。また、ドライバーの人材派遣や一般貨物の輸送、港湾荷役、海外への自動車輸送などの周辺ビジネスも展開しています。ゼロでは、デジタル戦略の一環として紙で運用していた「車両お預かり書」を、業務アプリを使って、Microsoft Azure(以下、Azure)環境のクラウド上で管理することにしました。これにより、従業員の負担軽減やコスト削減、顧客に対する新たな価値の創造を実現しています。

【会社概要】
紙の書類による業務負担と、顧客からの要望に応えるべくデジタル化を推進

デジタル化の取り組みや方針についてお聞かせください。

これまでゼロでは、紙の書類を使ったアナログな業務が数多く存在していました。さらに、ドライバーの拘束時間短縮や移動距離の制限、人材不足などに起因する「物流の 2024年問題」への対策が急がれており、迅速な解決に向けた行動が求められていました。そこでドライバーの業務負担を軽減し、作業効率の向上と、お客さまからの要望に応えるために、業務のデジタル化を推進することにしました。

具体的には、これまで紙で運用してきた「車両お預かり書」のデジタル化です。この「車両お預かり書」は、車両をお預かりした際に、傷やへこみの種類、大きさ、位置、搭載品の有無を記すものです。各種情報をクラウド上で管理する運用フローにすることで、ドライバーの業務負担を削減しながら、ペーパーレス化を実現し、お客さまに対しても必要な情報をタイムリーに届けられるようにしたいと考えていました。

この「車両お預かり書」デジタル化プロジェクトを経て、2023年7月から、DX プロジェクトを推進してきたメンバー 5名を招集し、DX戦略室を発足させました。DX戦略室ではさらなる DX を促進するために、「車両お預かり書」にとどまらず陸送関連業務をデジタル化するため、陸送業務専用アプリ「mola(モーラ)」の開発に注力しています。

【導入の背景】
記入ミスや管理の手間など紙運用ならではの課題が生じる

「車両お預かり書」ではどんな課題を抱えていたのでしょうか。

紙運用のころは、外装の傷やへこみ、鍵の本数、積んである荷物など、車両の状態を「車両お預かり書」に記入していました。この「車両お預かり書」に書かれた内容をお客さまにご確認いただき、サインをいただくといった業務フローです。

この業務フローは手作業だったため記載漏れや記入ミスが発生したり、「車両お預かり書」を紛失してしまったり、雨や雪など天候の悪い日には文字がにじんで読めなくなってしまったりと、さまざまな課題が発生していました。

さらに、「車両お預かり書」は、納入した地域の事業所に 10年間保管することになっています。事業所は全国に 50カ所以上あり、保管方法も紙のままだったため、保管場所のスペースが圧迫されていました。また、データベースの構築を行っていなかったため、「書類の内容を確認したい」と問い合わせがあった際には、所定の事業所に電話やメールで連絡して手作業で探してもらうなど、検索性にも課題がありました。

【選定の経緯】
業務アプリの構築実績とマイクロソフト製品の知識に加え、熱心な提案の姿勢を評価

業務アプリの開発を外部に依頼することにした経緯をお聞かせください。

株式会社ゼロ グループ戦略本 DX戦略室 室長 佐野 彰宏氏

株式会社ゼロ グループ戦略本部 DX戦略室 室長
佐野 彰宏 氏

ゼロの本業は陸送業であるため、そもそも IT 人材が不足しており、DX を進めようにもリソースが足りない状況です。

「車両お預かり書」のデジタル化を実現するために、専用業務アプリの構築を検討していたのですが、まっさらな状態から業務アプリを作るには、相当な時間と人員を必要とします。また、今回の業務アプリを Azure 上に構築しようとしていたのですが、ゼロでは Azure での開発経験があまり多くはありませんでした。そのため、業務アプリ開発を進めるうえではパブリッククラウドに対する知識や構築実績、ノウハウが必要でした。

これらのことから、今回の業務アプリ開発においては外部ベンダーに依頼するのが最善だと考えました。

JBS をパートナーに選定した理由を教えてください。

「車両お預かり書」のデジタル化構想は 2021年の秋ごろから始まりました。ちょうどそのころ、取引先の紹介がきっかけで JBS を知りました。

JBS は今回の開発プロジェクトと同様に、クラウド + タブレットを使う業務アプリ提供による業務改善の経験があることを知り、開発スピードと現場の運用にマッチした仕組みが作れると確信できました。

さらに、マイクロソフト製品に対する高い技術力と豊富な知見を持っていることを示す「マイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤー」を受賞していることも信頼性につながりました。

確かな技術力や実績だけでなく、JBS はさまざまな視点で的確に提言してくれる姿が印象的でした。業務フローや IT インフラをより良くしたいという、強い意志が伝わり「これなら信頼して任せられる」と考え、JBS に依頼することにしました。

【導入プロセス】
IT 知識がないドライバーでも簡単に使える操作性を重視して開発

業務アプリ開発プロジェクトはどのように進められたのでしょうか。

JBS からの提案は 2022年の春で、同年の夏ごろ本格的に開発プロジェクトが始まりました。そして社内メンバーと現場へヒアリングをするとともに、JBS に相談しながら要件を決めていきました。

2022年11月には、プロトタイプが完成し、ユーザーテストが行える状態になりました。その後、テストと改修を繰り返し、2023年1月から一部のエリアで、陸送業務を行う専用アプリ「mola(モーラ)」の運用をスタートさせました。

株式会社ゼロ グループ戦略本部 DX戦略室 主任 須釜 正憲氏

株式会社ゼロ グループ戦略本部 DX戦略室 主任
須釜 正憲 氏

開発プロジェクトの中で、苦労したことはありますか。

第一に、誰もが使いやすい業務アプリを目指しました。ゼロおよびゼロの協力会社ではドライバーを 3000人以上抱えているのですが、IT 知識が少ない人もいれば、入社したばかりの新人もいます。そのため、直感的に使える業務アプリにすることで、現場への定着化を図りました。

まずは業務アプリ開発にあたり現場にヒアリングし、要件の取捨選択を慎重に行うとともに、JBS と相談しながらシンプルな UI の業務アプリを目指していきました。これにより、誰もが簡単に使える業務アプリになったので、今ではほとんどのドライバーたちが使いこなしている状況です。

プロジェクトメンバーには経営企画部、営業本部、カスタマーサービス本部(輸送統括)など、専門の IT 部門ではない人も所属しています。JBS は、時には非 IT 部門からの無理難題とも言える要望にも応えてくれ、さまざまな意見を汲み取ったうえで最適な解決策を提案してもらい、プロジェクト進行に大きく貢献してくれました。

【導入効果】
25分の作業時間を 15分に短縮
経営のターニングポイントになる一大プロジェクトに

業務アプリ開発によってどのような成果を得られましたか。

株式会社ゼロ グループ戦略本部 DX戦略室 辻本 悠香氏

株式会社ゼロ グループ戦略本部 DX戦略室
辻本 悠香 氏

現状では業務アプリの全国展開ができておらず、一部のエリアから順次導入している状態ですが、ドライバーの工数は大きく削減できていると実感しています。従来は、紙の「車両お預かり書」にドライバーが車両の状態を記入し、納車時にお客さまからサインをいただくといった工程に平均 25分かかっていたのですが、それが 15分にまで短縮されました。また、事務員は車両お預かり書の回収と確認、お客さまへの提出などの工数が 1件あたり平均 25分かかっておりましたが、デジタル化によって事務員の工数を全て削減することができました。

さらに、車両の陸送業務を行う専用アプリ「mola」が全国展開された場合、年間で取り扱う陸送の約 350万台の作業が大幅に工数削減できると見込んでいます。

物流の 2024年問題により車両の輸送可能量が従来から 2割減ると言われているのですが、今回開発した業務アプリがその影響を緩和させるのに役立つのではないかと期待しています。ドライバーの工数削減だけでなく、紙書類の削減や管理をする方の負担軽減なども考慮すると、年間で約 6000万円のコスト削減が実現すると試算しています。

「車両お預かり書」のデジタル化によって、車両の状態を写真や画像で残せるようになったので、お客さまに車両をお渡しするときに、車両の状態を説明しやすくなりました。クラウドでデータを管理しているため、各事業所に問い合わせずとも、管理画面からリアルタイムに情報を確認できるようになったのも大きな効果です。今後は、取引先であるリース会社に対して、車両の損傷に対する補償の交渉に写真やデータを役立てられると考えています。

また、陸送業務を行う専用アプリ「mola」をリリースしたときは数多くのメディアに取り上げられ、それを見たお客さまから「ぜひ使いたい」とリクエストをいただくなど大きな反響がありました。今回の業務アプリリリースは、経営層からも大変好評であり、経営の大きなターニングポイントになると期待を寄せています。

【今後の展望】
社内に残る紙業務のさらなるデジタル化を検討

今後に向けた計画や構想をお聞かせください。

2023年6月現在の陸送業務を行う専用アプリ「mola」の対応エリアは、およそ半分にまで拡大しています。2023年中には全国にまで運用を広げることを目標とし、機能拡充を行っていく予定です。

陸送業務を行う専用アプリ「mola」には、ドライバーが扱うすべての紙書類をデジタルで「網羅」(モーラ)するという意味を込めています。ゼロには「車両お預かり書」だけでなく、「荷姿表」「日常点検表」「洗車チケット」「輸送指示書」「運転日報」など紙運用の業務がまだまだ残っているため、それらの業務デジタル化を進めていこうと計画しています。

株式会社ゼロ グループ戦略本部 DX戦略室 川瀬 峻輔氏

株式会社ゼロ グループ戦略本部 DX戦略室
川瀬 峻輔 氏

【JBS への評価】
プロジェクト遂行に向け卓越したチームビルディング能力を発揮

JBS の導入支援とサポート体制に対する評価をお聞かせください。

プロジェクト遂行に向け卓越したチームビルディング能力を発揮

JBS とは定例ミーティングを行っているのですが、その際、タイトなスケジュールでの実装を相談したところ「できるか、できないかでなく、やり切るしかない」と、かなり泥臭い回答をいただいたことがあります。その何が何でもプロジェクトを成功させようとする姿勢に感銘を受けたのを覚えています。ですが、実際には、JBS に現実的なスケジュールや実装範囲を提案していただきましたので、義理人情に厚い部分がありつつも、プロジェクトを確実に遂行しようとするファシリテーションスキルがあったからこそ、着実にプロジェクトを進めることができたのではないでしょうか。

また、JBS はチームビルディングについても優れていると言えます。定例ミーティングだけでなく、雑談や親睦会などを通して積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくれました。これによって JBS と深い信頼関係を築くことができました。

陸送業務を行う専用アプリ「mola」でデジタル化を実現できた業務はまだ一部です。これからも JBS とは DX の伴走者として同じゴールに向かって、一緒にデジタル化に取り組んでいければと考えています。

JBS 担当者からのコメント

製造・流通事業本部 製造流通3部  一場 空杜

日々、目をかけていただいているゼロさまの DX 推進案件に携わることができ、大変光栄に思います。
物流業界の 2024年問題解決に向け、車両お預かり書だけでなく、様々な紙業務のペーパーレス化延いては DX 化を一緒に推進する最良のパートナーになれるよう日々精進してまいります。

製造・流通事業本部 製造流通3部
一場 空杜

ソリューションスペシャリスト本部 ビジネスアプリケーション&データソリューション部 2課  窪田 晃太

業界をリードし続けるゼロさまの DX に携わることができて非常にうれしく思います。車両の陸送業務を行う専用アプリ「mola」は益々活発化し、先進的な取り組みが目白押しなので、ゼロさまの 1 ファンとして、引き続き尽力します。

ソリューションスペシャリスト本部 ビジネスアプリケーション&データソリューション部 2課
窪田 晃太

ソリューションスペシャリスト本部 ビジネスアプリケーション&データソリューション部 2課  高橋 宏輔

ゼロさまの DX における各施策に携わることができ、大変光栄に思います。車両お預かり書のデジタル化だけではなく、他のデジタル化や、デジタル化することで出てくるデータの利活用のような、今後の施策にもソリューション営業として携わらせていただきたく思います。今後もゼロさまの DX 推進に貢献できるよう尽力してまいります。

ソリューションスペシャリスト本部 ビジネスアプリケーション&データソリューション部 2課
高橋 宏輔

株式会社ゼロ

代表者:代表取締役社長 北村 竹朗
本社所在地:神奈川県川崎市幸区堀川町580番地 ソリッドスクエア西館6階
創業:1961年
資本金: 3,390百万円(2022年6月末現在)
事業概要:自動車を主体とする輸送、自動車の整備、中古車オークションの開催・運営、一般貨物輸送、ヒューマンリソース事業、港湾荷役、運輸・倉庫、中古車輸出、海外での自動車輸送など

  • 陸送業務専用アプリ「mola(モーラ)」の「 l 」は筆記体です。

2023.10.03公開

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