働き方見える化事例
花王株式会社
ニューノーマルな時代、働き方 DX で社員が安心して働ける環境づくりを目指す
業種 | 製造・ヘルスケア |
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テーマ | データ活用 |
製品パートナー | マイクロソフト |
(左から)花王株式会社 情報システム部門 Enterprise Service Management部 東 保行氏、内田 友梨香氏、阿部 蕉太氏、髙橋 大地氏
Azure と Power BI により「働き方見える化」を実現。社員を「見守り」、働き方をサポートする仕組み
『きれいを こころに未来に』をコーポレートメッセージに、顧客と感動を共有できるような製品やサービスを提供する日用品大手、花王株式会社(以下、花王)。「ハイジーン&リビングケア」「ヘルス&ビューティケア」「ライフケア」「化粧品」の4つの事業分野で、生活者に向けたコンシューマープロダクツ事業を展開。さらに「ケミカル」事業において、産業界のニーズにきめ細かく対応した製品を幅広く展開しています。
同社では、在宅勤務など新しいワークスタイルにおいても、社員が安心して働くことができる環境を確立する取り組みの一環として、Microsoft Azure(以下、Azure)と Microsoft Power BI(以下、Power BI)を活用した「働き方見える化」に取り組んでいます。
【利用状況】
業務能率の最大化や働き方の改善に取り組むためのシステムを構築
JBS が構築をサポートした「働き方見える化」システムの概要について教えてください。
社員の PC アプリケーションの利用実績や勤務状況など複数のデータソースを Azure 上で統合し、そのデータを Power BI で分析して、社員の働く状況を可視化するシステムです。
このような「働き方見える化」の仕組みは、就業管理などの管理的業務を目的としたものではありません。変化のあった社員とその状況を組織のマネジャーが気づき、社員が安心して働くことができる「働く環境」を実現することを目的としています。また、働き方を振り返ることで業務能率の向上や改善に活用するための情報提供基盤となります。
具体的には、どのようなデータソースを分析して、作業状況を分析しているのでしょうか。
社員の活動状況を把握するために、次のデータを活用しています。また、これらは、全社的な DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やデータドリブンマネージメントを可能にするためのデータレイク基盤にデータを蓄積し活用しています。
- 就業管理データ(外部 SaaS システム)
- PC のアプリケーション利用実績データ(外部パッケージ)
たとえば PC を利用した活動時間について、年間や月間のトレンド、グループ/チームでの偏りなどの分布状況を、組織階層を変えながら状況を把握することが可能となります。活動状況が変動する要因は、組織の職務や、プロジェクトの状況により様々で、個別の状況は複数の要因が複雑に関係しています。「働き方見える化」の仕組みは、組織のマネジャーが状況を見ながらフォローなどのアクションをすることが可能となり、これまで把握するのが難しかった活動状況を可視化することで、「気づき」を提供します。
月に 2回、組織のマネジャーに最新情報がレポートとして送付されます。レポートには、その組織の指標や状況から、組織のマネジャーが注視すべきポイントやケアが必要な点が、データをもとに自動的に説明されています。
ダッシュボードでは、期間の推移やグループ/チームの状況などを確認することができます。また、条件の変更や絞り込みを行うことで詳細を確認できるようになっています。これらは Power BI の機能で実現しています。
定期レポート(PDF)のサンプル
ダッシュボード(想定活動時間)のサンプル画面
システムの構築および保守運用体制を教えてください。
システムの構築はパイロットシステムを作成してもらい、JBS に支援してもらいながら機能の追加・修正を繰り返すアジャイルの手法を用いて構築を進めてきました。データレイク基盤については、当社のデータレイク基盤構築・運用担当チームと連携して進めてもらいましたが、Azure への展開は JBS に支援してもらっています。
当社は、運用は自社で対応する方針となっていますので、システムの構築は JBS に支援してもらいながら当社のメンバーと一緒に進めてもらい、実装してからは自分たちで運用できる状態を目指しました。
【導入背景】
働き方 DX で安心して働くことができる環境を実現
システム構築の経緯を教えてください。
花王株式会社 情報システム部門 Enterprise Service Management部 Corporate Serviceグループ アシスタントマネジャー
東 保行氏
花王グループでは、2021年度から 2025年度までの中期経営計画である「K25」を策定し、その中で「社員活力の最大化」を目的の 1つに掲げています。そのための施策として、「安心して働くことができる環境の実現」と「組織の成果を最大化するための組織マネジメントの実現」に取り組んでいます。
一方、当社においても新型コロナウイルス感染拡大による影響により、2020年2月より国内拠点勤務のグループ社員約 15,000人の在宅勤務を開始しました。
リモートワークの推進は、デジタル活用による働き方改革を推し進めるというメリットもありますが、その一方、これまでオフィスで見たり、感じたりすることができた各社員の様子や仕事の状況を組織のマネジャーや部門メンバー間で把握・共有するのが難しくなりました。
このような社員の状況が見えにくくなった状況においても、社員の働き方を可視化し、場所を問わず社員が安心して働くことができる新たな働く環境を実現する第一歩として今回の「働き方見える化」への取り組みがスタートしました。
なぜ、「働き方見える化」だったのでしょうか。
当社では、経営の根幹に ESG(環境、社会、ガバナンス)戦略を据え、全社で DX を推進しています。今回の取り組みでは、これまで定性的に把握してきた状況をデータから客観的に把握することで、今まで以上に社員の多様な働き方を支援し、「社員活力の最大化」を実現するマネジメントを可能とすることを目指しています。情報システム部門として、働き方 DX を複数のデータを集約・分析する仕組みを構築することでシステム面からサポートしようとするものです。
【構築経緯】
パイロットシステムをベースに設計開始から数か月で機能を実装
システムを構築した経緯を教えてください。
在宅勤務を開始した約半年後の 2020年9月から調査と企画を開始し、プロトタイプを 2021年1月に構築しました。一定期間評価を行い、その結果と目指すべき姿や現状の課題と照らし合わせ、何のために、どんな情報を、誰に、どのように届けるかを検討しました。その後、2021年10月より設計および実装を開始しました。JBS にはシステムの構築をお願いし、構築したシステムを評価しながら展開するシステムの機能の充実化をしてきました。
システムは 2022年2月に完成させ、データ確認を経て、2022年4月から人事担当者向けに先行展開するにいたっています。
花王株式会社 情報システム部門 Enterprise Service Management部 Corporate Serviceグループ
内田 友梨香氏
集計するデータや集計方法はどのように決めたのでしょうか。
当社は様々な職種や働き方をしている社員がいます。そのため、全体を見ながら個々にもデータの確認を行う必要がありました。今回は、各種データから社員の活動状況を可視化するにあたり、どのデータをどのように集計するかにより数値が変わるため、展開に向けて働き方の実態を示しているかどうかデータの妥当性を確保するための検証には時間を要しました。
また、データソースとなる PC アプリケーションの利用実績に関しては、データが大量となるため、データの発生タイミングと取得期間などの範囲は事前に検証を重ねました。
【選定理由】
個人ごとの活動時間に関するデータを取り扱うためアクセスコントロールと暗号化は必須要件
システムの構築にあたり、Azure および Power BI を採用した理由を教えてください。
花王株式会社 情報システム部門 Enterprise Service Management部 Corporate Serviceグループ
阿部 蕉太氏
システム基盤に関しては、次の理由から Azure および Power BI の採用を前提に JBS に相談しました。
- 主幹は人財開発部門であり、システムに精通していなくても利用・分析しやすい環境を提供できる
- 現行のマイクロソフトのライセンス契約を活用することにより低コストで利用できる
- 新たなシステム投資を最小限に抑えることができる
- 当社の基準に沿ったアクセスコントロールや暗号化を実施でき、統合的に管理できる
Azure 上に配置した社員の活動データや就業データなどは人事情報となるため、データベースのアクセスコントロールと暗号化は必須要件となります。
JBS に技術支援を依頼した理由を教えてください。
JBS はマイクロソフトの製品やサービスに精通しているのはもちろんですが、これまでの実績から対応が迅速で行動力や提案力も高いことから技術支援をお願いしました。
【導入効果】
リモートワークなど働き方が多様化しても社員の働き方や活動時間が把握可能に
導入後の様子について教えてください。
効果測定のために KPI を設定し、導入効果を測定していきたいと考えています。また、課題が見えた場合はそれを分析したうえで、今後の改善や拡張につなげていくつもりです。一方、全社展開前に予想していた以上に実態にあっていて、活動時間がリモートワークの状況でも把握可能になったと実感しています。
今後、働き方の見える化を進めることで、社員へのケアやフォローが適切にできるようになると確信しています。
花王株式会社 情報システム部門 Enterprise Service Management部 Corporate Serviceグループ
髙橋 大地氏
今後の展開予定などがあれば教えてください。
スタート時(2022年4月)は、店頭勤務や生産業務などあらかじめ定められたシフトにより業務する社員を除く、全社員約 15,000人の社員のデータの可視化を可能にしました。その情報を公開し活用してもらうために、人事担当の社員約 60名を対象に利用を開始しました。2022年9月には職場で就業のマネジメントを行う約 700名と、社員本人に情報の公開を拡大していきます。
社員が自身の情報を確認することで、活動内容を振り返り、自身の活動の特徴を認識してもらい、より効率的な働き方につながるよう活用してもらう予定です。
最終目標としては、組織のマネジメントとして、個人や組織の活動から良い点や課題を発見し、より組織が活性化し成果を上げることができる仕組みを確立したいと考えています。また、このシステムを通じて組織や社員間での対話のきっかけができ、企業の進む方向性や戦略を共有し、社員同士が日々生産性を上げていく方法を検討する組織風土の醸成につながる情報提供基盤に発展させていきたいと考えています。
【JBS への評価・期待】
技術面だけでなくプロジェクト全体に対する支援にも期待
JBS への評価や要望、期待などがあればお聞かせください。
たとえば、「働き方見える化」システムに関して、現時点ではデータソースのデータ量が多く処理に時間がかかるため、最新化に一定の時間を要しています。今後、よりタイムリーな情報を提供できる処理基盤へと改善をしていく必要があると考えていますが、このようなシステム基盤の技術的な部分に関しては、JBS の支援は欠かすことができません。
「働き方見える化」は、「社員活力の最大化」を推進するための施策の 1つです。そのため、状況や環境の変化に応じて、ロードマップを適宜見直すことで最終目標に到達できるようにしていきたいと考えています。JBS には、技術面だけでなく本プロジェクト全体に対する支援を期待しています。
JBS 担当者コメント
花王様の働き方の見える化推進プロジェクトに参画できたこと大変うれしく思います。本システムが社員の方が安心して働ける環境につながる一助になれば幸いです。今後、システムのブラッシュアップをされる際も是非ご支援させていただければと思います。
ビジネスソリューション本部 Dynamicsプラットフォームソリューション部
梨本 壮
花王様の働き方見える化プロジェクトに参画できたことを大変光栄に思います。データ基盤のクラウド化、Azure Data Factory を用いたデータ連携処理の作成、Power BI によるデータの可視化など幅広く携わらせていただき、非常に有意義な経験をさせていただきました。今後も様々な分野でご支援させていただければ幸いです。
ビジネスソリューション本部 Dynamicsプラットフォームソリューション部
櫛引 潤
花王様の中期経営計画の方針にも関わる重要なプロジェクトに携わることができ、大変うれしく思います。本システムはリリース後も状況や新たな課題に応じたアップデートを重ねていくことが重要だと考えておりますので、引き続き花王様のニーズに追従したご支援ができるよう尽力していきます。
ソリューションセールス本部 ソリューションセールス1部
野中 礼子
花王株式会社
代表者:代表取締役 社長執行役員 長谷部 佳宏
本社所在地:東京都中央区日本橋茅場町1-14-10
設立:1940年5月(創業:1887年6月)
資本金:854億円
従業員数:8,508人(連結対象会社合計 33,507人)(2021年12月31日現在)
事業概要:ハイジーン&リビングケア事業、ヘルス&ビューティケア事業、ライフケア事業、化粧品事業、ケミカル事業
2022.10.24公開