情報通信
株式会社NTT EDX
電子教科書・教材配信サービス「EDX UniText」に、
生成 AI を活用した学習支援機能を実装し、教育効果の向上を目指す
電子教科書・教材配信サービス「EDX UniText」に生成 AI 機能を実装し付加価値を創出
高等教育機関における学びのスタイル変革を強く後押し
高等教育機関におけるデジタル化が急務となる中、株式会社NTT EDX(以下、NTT EDX)は、生成 AI を活用した電子教科書・教材配信サービス「EDX UniText」の開発ならびに付加価値創出に取り組んでいます。会社設立時からのパートナーである JBS と協業し、まずは国家資格をはじめとする資格試験対策等に焦点を当て、テスト問題の自動生成や採点機能の実装に向けたトライアルを開始。両社はこの成果をもとに最適なビジネスモデルを確立するとともに、他分野にもサービスの横展開を図っていくことを目指しています。
【事業概要】
高等教育機関の課題解決につながる配信プラットフォームを展開
大学や専門学校などの高等教育機関では、未来を支える人材育成のために、学修者本位の教育への転換や、個々人に最適化された学修指導の実現など、より質の高い教育の提供が求められています。そんな新たな時代を先取りすべく、「ICT で学びを新たなステージへ」というミッションのもと、NTT西日本および NTT東日本、そして大日本印刷(DNP)の共同出資により NTT EDX は 2021年に設立されました。
株式会社NTT EDX 企画部
田中 友基 氏
社名の由来は、Education の「E」と Digital Transformation の略語である「DX」から成り立っており、電子教科書・教材のコンテンツ配信をはじめ、新たな学びを実現する学修環境の提供に注力し、大学や専門学校など高等教育機関が抱えているさまざまな課題の解決を支えていくことを目指しています。同社 企画部の田中 友基氏は、事業概要を次のように説明します。
「当社は高等教育機関向けに、電子教科書や電子教材などのコンテンツを提供する配信プラットフォームを運営しています。また、そこで実際に利用される教科書についても出版社から電子化の許諾を得て、書店を通じて各教育機関へ供給する流通体制も整備しています。さらにはプラットフォーム上に蓄積されたログを可視化・分析して、授業内容や教育手法の改善につなげるサービスも展開するなど、電子教科書・教材の導入支援から学習データの活用まで包括的なソリューションを提供しています」
【導入の背景】
高等教育機関の現場ではいまだに “紙” の教科書が残り続ける
NTT EDX が主事業とする教科書や教材の電子化には多くの利点があります。まず、持ち運びの利便性です。膨大な教科書や参考書を電子書籍として管理ができることから、大幅に荷物を軽減でき、なおかつマルチデバイスにも対応しているため、好きなタイミングに、好きな場所で、好きな方法で、学修することができます。また、電子教科書ならではの検索機能やハイライト機能、メモ機能を活用することで学習効率も高まります。
ところが日本の大学や専門学校における電子教科書の普及は、それほど進んでいないのが実態です。特に法学や医学などの専門分野では、電子化への切り替えが難しいとされています。
しかし、そんな高等教育機関もいつまでも紙の教科書のみに依存しているわけにはいかず、電子化・デジタル化が急がれています。
NTT EDX 企画部 部長の北山 賢一郎氏は、「文部科学省が 2019年より推進している GIGA スクール構想に象徴されるように、全国の公立小中学校さらには高等学校などでも教育のデジタル化が急速に進んでいます。その授業スタイルを通じて電子教科書に慣れ親しんだ児童・生徒たちが、次々に大学に進学してくる時期を迎えています」と話します。
株式会社NTT EDX 企画部 部長
北山 賢一郎 氏
【JBS 選定の経緯】
生成 AI を活用して EDX UniText に新たな付加価値を提供すべく JBS のノウハウを活用
もっとも教科書や教材を単に電子化するだけでは、実現される教育効果の向上にも限界があります。そこで NTT EDX が、創業時からパートナーシップを結んでいる JBS とともに注力しているのが、「生成 AI を活用して EDX UniText に新たな付加価値を提供し、教育の質の向上に貢献する」というアプローチです。
「もともと JBS には当社内のネットワーク環境の整備や、Microsoft 365 の導入などでもサポートをいただいてきた経緯があり、すでに深い信頼関係が築かれています。実際、担当者同士のコミュニケーションも円滑に進められており、この新たなプロジェクトでまた JBS とタッグを組めることに喜びを感じました」(田中氏)
具体的に両社が取り組みを開始したのは、株式会社neoAI が提供している、Azure OpenAI Service ベースの AI プラットフォーム「neoAI Chat」を活用し、EDX UniText に重要ポイントの要約や、テスト問題の自動生成・採点などを行う機能を付加するものです。まずは医療・看護系分野における看護師国家試験をターゲットとしたトライアルに着手しました。
「当社の電子教科書サービス事業において、もともと医療・看護系分野は教科書のご利用が多く、また資格対策として、これらの電子教科書を用いた授業や個人学習のニーズが存在していることから、最初に取り組むべきテーマとして、最も適切だと考えました」(北山氏)
この NTT EDX の基本構想を、JBS はクラウドから AI モデルまで包括した先端の技術力と SI(システムインテグレーション)のノウハウで支えています。
JBS クラウドテクノロジーサービス事業本部 Data&AIプラットフォーム部 AIソリューション1グループの藤嵜 稜平は、「JBS は、NTT EDX さまの会社設立時から電子教科書サービスを実現するコンテンツ配信プラットフォームのインフラ構築に深く関与しています。多様な教育関連システムの豊富な構築実績と知見を有しており、ビジネスをともに推進する当事者の一員として電子教科書を世に広く普及していきたいという想いを持っています。そうした中で教科書をデジタル化するメリットを最も訴求できる技術要素として生成 AI に注目し、システム設計やユーザーインターフェース開発、看護師国家試験の過去問題の学習ならびにファインチューニング(※)、クラウド基盤(Microsoft Azure)との連携などを主導してきました」と話します。
- 既存の学習モデルを、特定のタスクや特定のデータセットに合わせて微調整すること
【導入効果】
テスト問題の自動生成や採点に関する精度はすでに実用レベルに到達
看護師国家資格取得をターゲットとした今回の EDX UniText 開発プロジェクトは、2023年1月よりシステム要件定義ならびに基本設計を開始。同年 3月~5月にかけてトライアル環境を構築しました。
「JBS は既存システムを効果的に活用するとともに、neoAI 社とも直接コンタクトを取りながら AI モデルの導入を進めてくれました。おかげで短期間のうちにトライアル環境を準備することができ、実のある検証を実施することができました」(田中氏)
結果としてテスト問題の自動生成や採点に関する精度は、まだトライアル段階にありながらすでに実サービス展開にも耐えられる高いレベルに達しています。
「監修・検証作業には看護師や医師など実際の医療現場の有識者にも加わっていただき、AI によるテスト問題の自動生成や自動採点の精度向上に努めました」(北山氏)
そして同サービスのトライアルは現在、次のステップとして実証実験に進み、効果測定やご利用者さまへのヒアリングを実施しています。
【今後の展望】
すべてのステークホルダーが享受する価値を最大化するビジネスモデルの確立を目指す
NTT EDX では、EDX UniText のサービスリリースに向けてさらなるヒアリングや要件検討を続けていく予定です。JBS でもこうした事業展開を継続して支えていく意向にあります。
「サービスの提供側から利用者側まで、すべてのステークホルダーが享受する価値を最大化するためのビジネスモデルを NTT EDX さまと共に確立していきます」(藤嵜)
一方で NTT EDX では、看護師国家資格対策だけにとどまらず、IT 系資格や法律系資格などさまざまな領域をターゲットとした EDX UniText の横展開を計画しています。
「生成 AI 技術そのものも急速に進化しており、電子教科書・教材に画像や動画などのリッチコンテンツを組み込んだマルチモーダル AI の活用、テスト問題の解答結果を分析し、一人ひとりの弱点に対するアドバイスなど、さらなる付加価値創出も視野に入れ、個別最適な学びをご支援するサービスを検討していきます」と北山氏は語り、今後の高等教育機関におけるデジタル変革を後押ししていく意向です。
株式会社NTT EDX
代表者:代表取締役社長 金山 直博本社所在地:東京都千代田区大手町1丁目2番1号 Otemachi One タワー6階 ワークスタイリング大手町内
設立:2021年10月8日
事業概要:電子教科書・教材配信事業、教科書の電子化・流通支援事業、上記に付随関連する一切の事業
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2025.10.22公開