AWS 導入事例
株式会社ロキテクノ
ハイブリッドクラウドでファイルサーバの信頼性向上と運用負荷軽減を両立
業種 | 製造・ヘルスケア |
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テーマ | クラウド活用 |
製品パートナー | アマゾン ウェブ サービス |
(左から)株式会社ロキグループ 情報システム部 情報システムグループ グループリーダー 松本 喜孝氏、情報システム部 情報システムグループ 松枝 泰三氏、 情報システム部 情報システムグループ 大類 未和氏
株式会社ロキテクノ(以下ロキテクノ)をグループの中核に、「100年企業」をめざして創造を続けている株式会社ロキグループ(以下、ロキグループ)。近年は、シンガポール、マレーシア、韓国、アメリカへとグローバル展開を加速している。ロキテクノの固有技術である「濾過技術」は、半導体や液晶パネルをはじめ、飲料や化粧品などさまざまな製品の製造工程で利用されており、コンシューマ市場向けのブランド「IKOR (イコー)」を通じて、高性能ポット型浄水器や自然気化式加湿器なども提供している。また、同社の高純度オゾン発生装置も評価が高く、半導体製造工程や殺菌・滅菌などの分野で幅広く利用されている。
【利用状況】
AWS を活用したハイブリッドクラウド環境でファイルサーバを構築
今回、JBS が構築をサポートしたハイブリッドクラウドについて教えてください。
当社では国内の主要拠点で利用しているファイルサーバを、 AWS(Amazon Web Services)Storage Gateway を利用したハイブリッドクラウドで構築・運用しています。すでに本社と九州工場のファイルサーバーは、オンプレミスで運用していた旧ファイルサーバーより移行済みで、現在、北陸工場でも準備を進めているところです。
ファイルサーバのデータはすべて Amazon S3(Amazon Simple Storage Service)にて保管・管理していますが、 頻繁にアクセスするデータは社内のオンプレミス環境で仮想アプライアンスとして運用する Storage Gateway 上に同期されています。エンドユーザはクラウドを意識することなく Storage Gateway をファイルサーバとして利用する仕組みとなっています。
Storage Gateway のキャッシュ領域には 1.2TB のストレージ領域を、Amazon S3 側には 3TB の保管領域を確保しており、Amazon S3 上のデータはさらに 2か所の別領域にミラーリングしています。
日本ビジネスシステムズ株式会社(以下、JBS)には、「要件定義」から「設計・移行・構築」、「監視・運用」までをトータルでサポートしてもらいました(「Data Planet for AWS」サービスを利用)。
ロキグループにご利用いただいた「Data Planet for AWS」の主なサービスメニューと概要
要件定義
サービスメニュー | 概要 |
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クラウド導入ワークショップ | 既存ファイルサーバの移行と新規サーバ構築に関しての提案、AWS の効果的な活用・導入方針検討のサポート |
クラウド PoC (Proof of Concept) | AWS の各種サービスに関する動作検証 |
設計・構築
サービスメニュー | 概要 |
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クラウド設計・構築 | クラウド環境の設計・構築 |
ネットワーク接続 | AWS - 拠点間の VPN 接続 |
移行
サービスメニュー | 概要 |
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クラウド移行 | 既存ファイルサーバの環境を AWS へ移行 |
トレーニング | AWS の操作や設定方法について、ハンズオン形式でのトレーニング |
運用
サービスメニュー | 概要 |
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請求代行サービス | クレジットカードによるドル建ての請求を代行し、円建ての請求書を発行 |
監視・障害対応サービス | AWS 上の仮想マシンや各種サービスの稼働状況の監視、障害発生時は一次切り分け・障害復旧を支援・実施 |
ハイブリッドクラウドによるファイルサーバの構成概要イメージ
【効果】
ファイルサーバの信頼性向上と運用負荷軽減を両立し、容量不足の不安からも解放
ファイルサーバを刷新した効果とメリットについて教えてください。
オンプレミスでファイルサーバを運用しているときは、容量が逼迫してくるとエンドユーザに不要なファイルを消去してもらっていました。そのため、常にストレージの容量を増やす検討を繰り返してきましたが、根本的な解決策が難しく、予算や手間を確保するのも容易ではないことから、本腰を入れて取り組むことが難しい状況でした。
さらに、データのバックアップやリストアに関する負荷や不安も重なり、ファイルサーバの運用管理は物理的にも、精神的にも大きな負担となっていました。
今後 5年間でかかるコストは、オンプレミスでファイルサーバを構築・運用するのとほぼ変わりませんが、ハイブリッドクラウドでファイルサーバを運用するようになり、運用負荷の負担から解放されました。感覚的なものですが、負荷は 1/10 程度に軽減されたと実感しています。
そのほかの導入効果やメリットは、次の通りです。
株式会社ロキグループ 情報システム部 情報システムグループ グループリーダー
松本 喜孝氏
効果1:容量の不安の解消と最適化
AWS を利用することで、余裕を持って容量を確保できると同時に、仮に急激に使用容量が増えても、柔軟かつ迅速な対応ができるようになりました。各部署に割り当てている容量が足りなくなりそうな場合でも、物理的な限界があるので手軽に容量を増やすというわけにはいきませんでしたが、ハイブリッドクラウドにしてからは必要に応じて柔軟な対応ができるようになりました。
オンプレミスだと5年後の使用容量を計算してストレージを購入しなければなりませんでした。しかし、そのような余分な容量を確保する必要もなくなり、そのときに必要な容量分の費用を負担すれば済みますので、コストの最適化を図ることもできました。
効果2:信頼性の向上とバックアップ/リストアに関する手間と不安の解消
仮にファイルサーバにトラブルが発生しても、すべてのデータは AWS 上に保管されています。しかも、AWS 上でバックアップとして取得しているスナップショットも残っています。AWS 自体の信頼性も高く、JBS が稼働状況を常に監視してくれていますので、オンプレミスでバックアップをしているときよりも信頼性が向上しました。
また、バックアップの手間も不用となり、スナップショットからデータをリストアする作業もシンプルなので、これまで抱いていた不安からも解消されました。その結果は、見え難い部分ではありますが、運用コスト削減にもむすびついていると捉えています。
さらに、エンドユーザが誤ってファイルを消失してしまった際、従来はバックアップデータから復旧させていましたが、正直なところ面倒な作業で半日以上かかることもありました。現在の環境では余裕を持って履歴データ(ボリューム・シャドー・コピー)の領域が確保できたため、簡単に、短ければ十分程度で復旧できるようになり、エンドユーザの満足度向上と作業負荷の削減を両立できています。
効果3:エンドユーザに変化や負担を感じさせないこと
エンドユーザの使い勝手も変わらず、パフォーマンスも犠牲にせず、信頼性の向上や運用負荷の軽減を実現できたことも重要なメリットの1つです。実際、ファイルサーバを使ってみて、体感速度が落ちたという報告はありません。
効果4:属人化の解消
初期段階から JBS にサポートしてもらったことで、設計や仕様に曖昧な部分を残すことなく仕様を決めることができました。さらに、標準的な技術を活用しており、操作方法や設定方法のトレーニングも実施してもらっているので、特定の担当者に属人化しにくい運用環境を実現することができました。
効果5:BCP 対策の強化(DR 環境の確立)
データがクラウド上に複数保管されているので、災害対策も強化されました。BCP 対策としてパーフェクトだとは考えていませんが、コストと手間をかけず DR 環境を確立できたことは大きなメリットの1つだと捉えています。
【背景】
「クラウドファースト」を実現するためには、信頼できるパートナーが必要
ファイルサーバをハイブリッドクラウドで構築した経緯を教えてください。
株式会社ロキグループ 情報システム部 情報システムグループ
松枝 泰三氏
今回のシステム構築には大きく 2つの目的がありました。1つは、「ファイルを保管・共有する場所」を新たに作ることです。結果として物理的なファイルサーバを構築することになる可能性はありましたが、ファイルサーバを更改すること自体が目的ではなく、あくまでもファイル共有環境を実現することを目的としました。
そのベースとなるのは、「クラウドファースト」という考え方です。当社では、限られた人数の IT 担当者で国内外すべての情報システムを構築・運用しており、今後、先進的なシステムを効率的に利用していくために、そしてグローバルなビジネス環境へ柔軟に対応するためにも、クラウドの活用は不可欠です。その第一弾としてファイルを保管・共有する「場所」をクラウド上に展開したいと考えました。
そして、もう1つの目的はクラウドを積極的に活用していく上で、協力パートナーを絞り込むことです。当社には、まだクラウドの活用に関して経験もノウハウもありません。また、常に進化していく技術を社内だけでキャッチアップしていくのも容易ではありません。
そのため、「クラウドファースト」を推し進めていくための信頼できるパートナーが必要で、今回の提案や対応を検証して、信頼できるパートナーを見極めたいと考えました。
クラウドサービスとして AWS を採用した経緯を教えてください。
AWS 以外のクラウドサービスも検討しましたが、コストパフォーマンスや信頼性、実績を考えると、今回のケースでは AWS が最適だろうと当社でも考えていましたし、JBS の意見も同じでした。
【選定理由】
技術的に複雑なことはかみ砕き、大枠な話はユーザ視点や経営者的な視点で説明できる能力を高く評価
「クラウドファースト」を推し進めるためのパートナーは、どのように見極めたのでしょうか。
これまでの関係性や紹介といったしがらみに捕らわれず、フラットな目線で信頼できるパートナーを選びたいと思い、ホームページなどで調べていくつかのパートナーに提案を依頼しました。
パートナーを選定する際に考えた要件は次の通りです。
- AWS に限らずクラウド全般に精通していること
- 技術だけなく、業務に対する理解力が高いこと
- 一方的な提案ではなく、気軽に相談に乗ってもらえること
- 担当者の対応とサポート体制が充実していること
- 提案内容そのものの評価(変更を依頼することも含む)
株式会社ロキグループ 情報システム部 情報システムグループ
大類 未和氏
パートナーとして JBS を選んだ理由を教えてください。
JBS には、AWS に限らず幅広いクラウドの分野において導入実績が豊富で、サービスもわかりやすくメニュー化されていることから提案を依頼しました。実際の提案内容を見て、その判断が間違っていないことを確認できました。
提案内容も通り一辺倒なものではなく、「オンプレミス」、「オールクラウド」、「ハイブリッドクラウド」、「サーバコロケーション」など、さまざまなパターンを示して、それぞれのメリットとデメリットをわかりやすく紹介してくれました。技術的に複雑なことはかみ砕いて教えてくれましたし、大枠な話はユーザ視点や経営者的な視点で説明してもらえたので、業務理解力が高く、安心して相談できると考えました。
担当者の対応も迅速かつ丁寧で、何度電話をしても真摯な態度で対応してくれましたし、サポート体制も組織化されており分野ごとにスペシャリストがいることから、安心してサポートを任せられると判断しました。
【今後の期待】
レガシーシステムの更改にあたり、JBS ならではのアイデアと提案に期待
JBS に対しての評価をお聞かせください。
今回のシステムの成否は、当グループのクラウド戦略を左右する重要なプロジェクトでしたが、おかげさまでシステムは順調に稼働しており、クラウドに対する社内の評価も向上しました。
JBS は妥協することなく、私たちの要望に耳を傾け、期待以上の対応をしてくれたので、安心してプロジェクトを進めることができましたし、私たちのクラウドに対する見知も広がりました。
また、予算ありきで提案をしてくるパートナーもいましたが、JBS はそのような態度は見せず、ロキグループにとって何が重要なのかを最優先に対応してくれるのでとても感謝しています。
本プロジェクトは、楠 藍花(技術)、岩田 景新(技術)、寺本 博久(技術)が担当しました。(写真左より)
JBS への期待があればお聞かせください。
現在、さまざまなレガシーシステムの更改を計画していますが、そのコンセプトは「クラウドファースト」であることは変わりありません。信頼できるパートナーとして JBS に頼るところは少なくありません。JBS ならではのアイデアと提案に期待しています。
JBS 担当者コメント
この度はクラウドを活用したファイルサーバの導入について弊社にご依頼いただき、また、取材にもご対応いただきありがとうございました。
IT システムにおけるパブリッククラウドの活用については、様々な懸念や不安、最適な構成、サービスの選択など、多くの課題があります。今回ご導入頂いたソリューションでは、適材適所でのクラウド活用によりメリットを実感していただけたとのことで、安堵いたしました。今後とも、貴社の IT 環境に対して、クラウドのみならず多様なソリューションでお手伝いができればと思います。
システムインテグレーション統括本部
インフラストラクチャーソリューション本部 寺本 博久
システムインテグレーション統括本部
AO ソリューション本部 岩田 景新
システムインテグレーション統括本部
AO ソリューション本部 楠 藍花
株式会社ロキグループ
代表者:代表取締役社長 兼 最高経営責任者 伊東 伸
本社:東京都品川区南大井 6-20-12
設立:2013年1月17日
資本金:5,000万円
従業員数 :433名(グループ全体、2013年 9月末現在)
URL:http://www.rokigrp.com/
株式会社ロキテクノ
代表者:代表取締役社長 伊東 伸
本社:東京都品川区南大井 6-20-12
設立:1978年12月12日
資本金:12億8,408万円(2014年 9月末現在)
事業概要 :フィルトレーション事業(エレクトロニクス分野、ファインケミカル分野、ケミカル分野、一般産業分野、食品・飲料分野)、システムソリューション事業(エレクトロニクス分野、一般産業分野、食品・飲料・製薬分野、水処理・環境分野)、コンシューマー事業(IKOR (イコー) 製品:家庭用ポット型浄水器、自然気化式加湿器、店舗用給水機など)
URL:https://www.rokitechno.co.jp/
JBS は Amazon Web Services の「APN スタンダードコンサルティングパートナー」です。
2016.01.08公開
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