データ分析基盤導入事例
株式会社集英社
ユーザー部門主導でデータ分析基盤を構築 誰でも必要な時に必要なデータの取得が可能に
業種 | メディア・広告・エンターテインメント |
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テーマ | データ活用 |
製品パートナー | マイクロソフト |
(左から)株式会社集英社 コミック販売部 コミック販売第2課 主任 須藤 明洋氏、株式会社一ツ橋企画 システム部 企画開発課 副課長 田邉 雄太氏、同社 同部 同課 梁本 紗貴氏
Azure Synapse Analytics と Microsoft Power BI によりサイロ化した売上データの民主化を実現
2026年に創業 100周年を迎える株式会社集英社(以下、集英社)。1926年の創業以来、総合出版社として漫画誌、ファッション誌、ジャーナル誌などの雑誌をはじめ、文芸書や文庫、新書から、美術書、写真集、辞・事典まで、多様な分野を手がけています。さらに、昨今は紙の出版物にとどまらず、デジタル配信や映像化、イベントや物販など、さまざまな分野で良質なコンテンツを提供しています。
同社では、従来の紙媒体の出版だけでなく、デジタルコンテンツや海外市場における売り上げなど多岐に亘る販売データのサイロ化が課題となっていました。そのため、必要なとき、必要な形で販売情報を分析するためのデータ分析基盤を、Azure Synapse Analytics(以下、Azure Synapse)および Microsoft Power BI(以下、Power BI)をベースに構築し、今後の DX に向けた土台作りを実現しました。その取り組みは株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ(以下、ADKマーケティング・ソリューションズ)と JBS が共同で支援しました。
【利用状況】
売り上げ情報を集約・管理・分析するためのデータ分析基盤を構築
JBS が構築をサポートしたシステムの概要について教えてください。
社内で管理しているさまざまな売り上げ情報を集約・管理・分析するためのデータ分析基盤を、Azure Synapse および Power BI を用いて構築しました。JBS には、PoC から設計、構築、運用サポートにおける、技術面をトータルでサポートしてもらいました。
データ分析基盤は 2021年4月から構築を開始し、2022年4月より利用を開始しています。現段階ではコミック系の編集部や営業関連部署の担当者約 500名が、Power BI で作成する定型レポートを用いて、作品ごとの販売データなどを閲覧・出力しています。
今後の展開としては、海外の販売データや販売促進の実施履歴などデータソースの拡充を図るとともに、レポート(帳票)の充実も図っていきたいと考えています。さらに、データドリブン経営を促進する情報の 1 つとして販売データを活用したり、在庫の最適化や需要予測などの分析業務を進めたいと考えています。
現段階でどのようなデータソースを連携しているのでしょうか。また、管理しているデータのボリュームはどのくらいになるのでしょうか。
主なデータソースとしては、「書籍・コミックス・雑誌の売上データ」をはじめ、「デジタルコンテンツの売上データ」、「入出庫データ」、「在庫データ」、「商品マスタ」、「書店法人マスタ」、「個別書店マスタ」、「編集部マスタ」となります。今後、「店頭での購買層のデータ」や「販促活動の履歴」などもデータソースとして追加する予定です。
基本的に過去 10年分のデータを保管しており、データソースのボリュームは、データベース全体で約 100GB、約 30億レコードとなります。
集英社が構築したデータ分析基盤のシステムアーキテクチャー
データ分析基盤の構築および運用体制について教えてください。
構築フェーズでは、ADKマーケティング・ソリューションズがデータ活用に関するコンサルティングを、JBS がシステム構築に関わる提案から実装までを担当し、One Team で対応してもらいました。さらに各データソースとの連携に関しては、各システムを運用しているグループ会社の株式会社一ツ橋企画(以下、一ツ橋企画)と株式会社数理計画(以下、数理計画)に協力してもらいました。
運用フェーズにおいても、一ツ橋企画や数理計画の担当者と連携しながら、Azure Synapse などサービスインフラの保守・管理、データソース、ユーザー、レポートの追加に柔軟に対応できる体制を整えています。JBS には新規データソースとの連携やパフォーマンス改善といったチューニング、全体的な技術サポートを依頼しています。
【導入背景】
サイロ化したデータが原因となる非効率の解消を目指す
データ分析基盤を構築したねらいについて教えてください。
株式会社集英社 コミック販売部 コミック販売第2課 主任
須藤 明洋氏
以前は、編集部や営業部署の担当者がある作品の販売データを確認しようとすると、コミック販売部に問い合わせて、書籍や雑誌の売上データをメールで送ってもらえば済んでいました。しかし、今ではデジタル作品の販売が拡大しており、読者との重要なタッチポイントにもなっているため、紙の書籍や雑誌の売上データとは別に、デジタルコンテンツの販売データを別部署に問い合わせ、両方のデータを確認しなければならない状況となっていました。
そのような状況に現場では大きなフラストレーションを感じており、紙媒体とデジタル媒体の売上を一元的に確認できるようにしたいと考えるようになりました。そこで、Power BI を用いてダッシュボードを構築するために、ADKマーケティング・ソリューションズに相談しました。
当初は私の認識不足もあり、Power BI を導入すれば済むと考えていたのですが、サイロ化しているデータを一元的に収集・管理して、いつでも、すぐに、見たい切り口でデータを見える化し、分析できる環境を実現するためには、既存のデータベースとは別に、データ分析基盤が必要だということがわかってきました。そこで、クラウドデータベースを検討し始めました。
【選定理由】
大量のデータソースを取り扱う上で、パフォーマンスや拡張性を考慮して Azure Synapse を採用
Azure Synapse を採用した理由を教えてください。
集英社では 2020年から Office 365 を全社利用しています。その中で Microsoft Power Platformというサービスを日本マイクロソフトが展開していて、そのサービス群の中に Power BI という BI ツールがあることを知りました。いろいろと試したり、調べたりする中で、Power BI であればライセンス費用を抑え、販売データを一元的に分析するレポートを手軽に実装できると考えました。そこで、Power BI の利用を前提に相談をしたことから、組み合わせの相性やユーザー管理といったメリットを踏まえて Microsoft Azureのデータベース環境を導入することになりました。検討段階では Azure SQL Database の採用も検討しましたが、取り扱いデータの規模が膨大であることからパフォーマンスや拡張性を考慮して、最終的には Azure Synapse を採用するにいたりました。
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ マーケティングインテリジェンスセンター 第1プランニングユニット アーキテクトグループ
安西 麻里子氏
JBS に技術サポートを依頼した理由を教えてください。
Azure Synapse を採用するにあたり、スムーズかつ短期間にデータ分析基盤を整備するためには、経験や知見が豊富なベンダーの支援が必須でした。あらゆるマイクロソフト製品に精通しており、データ分析基盤の構築・運用に関する実績が豊富な JBS が、技術パートナーとしては最適であるという提案をADKマーケティング・ソリューションズから受けたのがきっかけとなります。
また、本プロジェクトにおいては、外部のベンダーにアウトソーシングをして社内にノウハウや知見が残らないという状況は避けたかったので、リリース後は社内もしくはグループ企業で運用ができる体制を実現することは必須要件として考えていました。JBS は、グループ企業へのトレーニングや技術支援も含めて柔軟に対応してもらえるということを確認できたので、ADKマーケティング・ソリューションズと JBS の協業により、One Team で進めてもらうことにしました。
【導入効果】
快適なデータの分析環境を実現し、データを入手するまでのタイムラグも解消
データ分析基盤を導入した効果について教えてください。
利用を開始してまだ間もないですが、データを一元的に取り扱えるようになり、利用者からは数多くの好意的な反響がありました。さらには、これまでは各部署に依頼してデータを入手するまでにタイムラグが発生していましたが、必要なとき、すぐに情報を確認できるようになったことから、業務の効率化や作業負担の軽減につながっています。
運用面に関しても、データベースやクラウドの基本的な運用はコンソールから対応できるので、開発や運用にかかる工数やコストを抑え、最小限のリソースで対応できるのは、Azure Synapse の大きなメリットだと捉えています。
また、当社には、これまで共通基盤となるデータ分析基盤が存在しておらず、BI ツールも各部署でバラバラに導入されていました。今回の取り組みがきっかけとなり、本データ分析基盤をベースに社内におけるデータ分析環境を標準化していこうという動きも出始めており、波及効果の 1 つとして捉えています。
【JBS への評価・期待】
迅速な対応と高い知見を評価
JBS への評価や要望、期待などがあればお聞かせください。
JBS は当初から、スピード感のある対応と高い技術力で本プロジェクトを支えてくれました。また、技術的な知見から実現できること、実現が難しいこと、リリース後に対応したほうが良いことに対する判断材料を明確に示してくれたので、納得して設計や構築を進めることができ、結果的に当初の予定通りにシステムの利用を開始できました。
また、今回は、当社だけでなく、ADKマーケティング・ソリューションズや一ツ橋企画、数理計画と複数の会社が関係するプロジェクトとなりましたが、JBS の柔軟かつ真摯な対応により共通イメージを持ちながら、スムーズにプロジェクトを進めることができ、感謝しています。
今後も、新しいデータソースの取り込みや機能拡張、パフォーマンスのチューニングなどを検討しています。これからも、これまでと変わらない迅速で柔軟な対応に期待しています。
JBS 担当者コメント
集英社さまの業務改善に向けたデータ分析基盤構築に関わることができ、大変光栄です。集英社さま、ADKマーケティング・ソリューションズさまの常に前向きに取り組む姿勢とご協力があってこそのプロジェクトの成功だと感じております。引き続き、集英社さま、ADKマーケティング・ソリューションズさまのビジネス発展に尽力していきます。
ビジネスソリューション本部 Dynamicsプラットフォームソリューション部
データソリューション1グループ
髙濱 隆樹
レポート作成から始まりデータ基盤の構築、運用と一貫して参画させていただき非常に有意義な経験をさせていただきました。Azure Synapse を構築する中で苦労した部分もありましたが、集英社さま、ADKマーケティング・ソリューションズさまにお力添えいただいたおかげで無事に運用まで進むことができました。今後も Power BI や Azure、データ分析に関して、ぜひご支援させていただければと存じます。
ビジネスソリューション本部 Dynamicsプラットフォームソリューション部
データソリューション1グループ
鵜澤 佑太
集英社さまのデータ分析に ADKマーケティング・ソリューションズさまとともに携わることができ大変光栄です。集英社さまが新しい技術の導入に積極的でいらっしゃったので、私たちも支援しながら一緒に成長させていただきました。貴重な経験ができ感無量です。今後ともさらなるデータ活用の一助ができれば幸いです。
ビジネスソリューション本部 Dynamicsプラットフォームソリューション部
データソリューション1グループ
後藤 菜摘
集英社さまの業務改善に貢献できたことを嬉しく思います。JBS の対応スピード、技術力、人柄を含めてご評価をいただき、各関係会社が一体となって取り組み・成功したプロジェクトでした。
通信・メディア・サービス・公共本部 メディア・エンターテインメント
池田 翼
株式会社集英社
代表者:代表取締役社長 廣野 眞一
本社所在地:東京都千代田区一ツ橋2-5-10
設立:1926年8月
資本金:1億80万円
従業員数:764名(2021年10月1日現在)
事業内容:雑誌(マンガ誌、ファッション誌、芸能誌、文芸誌など)、書籍(文芸書、文庫、新書、実用書、ビジネス書、全集など)、コミックス、辞典、児童書、写真集などの出版。電子書籍・電子コミックの制作・配信など
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
代表者:代表取締役社長 大山 俊哉
本社所在地:東京都港区虎ノ門1-23-1
虎ノ門ヒルズ森タワー
設立:2019年1月
資本金:1億円
従業員数:約1,490名
事業内容:マーケティング課題解決の統合的な提案・実施、デジタルおよびマスメディアのプランニング・バイイング、データドリブンマーケティング等を行うソリューション会社
2022.06.09公開