報道支援システム内製開発事例

日本テレビ放送網株式会社・株式会社日テレITプロデュース

現場視点を持った IT 人材がビジネス戦略を具現化 業務特化システムの開発を内製で実現

報道支援システム内製開発事例 日本テレビ放送網株式会社・株式会社日テレITプロデュース
業種 メディア・広告・エンターテインメント
テーマ DX・内製化
製品パートナー その他

(左から)日本テレビ放送網株式会社 ICT戦略本部 担当局次長(兼)部長 ビジネスソリューションディビジョン ディビジョンマネージャー 隅田 哲氏、同ディビジョン 専門副部長 田上 由起子氏、株式会社日テレITプロデュース カスタマーサクセス部 副部長 村上 典明氏


IT 戦略実現のための情報システム子会社を JBS と設立

テレビ放送免許を民放テレビ局で初めて取得し、2021年に開局 68年を迎える日本テレビ放送網株式会社(以下、日本テレビ)。同社を中心とする日テレグループでは、地上・衛星でのテレビ放送事業を中核としたメディア・コンテンツ事業だけでなく、インターネットでの定額制動画配信事業(動画配信サービス「Hulu」)や教育事業、スポーツクラブ運営(フィットネスクラブ「ティップネス」)といった生活・健康関連事業など、「テレビを超えろ」を合い言葉に新たな領域にも事業を積極展開しています。
同グループでは日本テレビを始めとするグループ企業に最適な IT ソリューションを提供するため、日本テレビと JBS の出資により、株式会社日テレITプロデュース(以下、日テレITプロデュース)を設立。放送局という業界の現場視点を持つ IT 人材が、グループの戦略を具現化する業務アプリケーションやインフラの開発・運用を担っています。

【開発実績】
報道番組の制作を支援する基幹システムの開発を内製で実現

JBS が開発をサポートした「報道支援システム」について教えてください。

報道支援システムは報道番組の制作を支援する基幹システムです。取材をしてからオンエアするまで、ニュースコンテンツを制作するために必要な情報を一元管理しており、全国の日本テレビニュースネットワーク 30社がニュース情報を相互にやり取りするために共同利用しています。

報道支援システムの開発にあたり、JBS はどのような役割を担ったのでしょうか。

現在利用している報道支援システムは、1990年代後半に導入したシステムを一新したものとなります。JBS には再開発の際にサポートをお願いしました。単に開発を外注という形で委託したのではなく、システム開発の主体は日テレITプロデュースとなります。JBS のエンジニアには、日テレITプロデュースのプロジェクトメンバーの一員として、一体感を持って、システムの設計や開発、プロジェクト管理などをしてもらいました。

報道支援システムにおいて内製化を決断した経緯を教えてください。

旧報道支援システムはアーキテクチャの刷新が必要となり、ゼロベースでの更新プロジェクトがスタートしました。その際、旧システムを開発したベンダーによる開発と内製化を比較検討した結果、初期開発費用はもちろん、システムの改修時に発生する費用や手間を考えると、日テレITプロデュースでシステムを内製した方が大幅にコストダウンを図ることができるということがわかりました。

加えて、次のポイントから内製化を進めることを決断しました。

  • 主体性を持ち、現場視点でビジネスロジックをシステムに踏襲できる
  • ビジネスサイクルに合わせて、機能追加・改修のスピードアップを図ることができる
  • 特定のベンダーへの依存や属人化を防ぎ、知見を社内に蓄積できる
  • システムのブラックボックス化を回避できる

一方、当時の日テレITプロデュースは人材も経験も少なく、JBS からの出向社員が多く在席している状態でした。そこで JBS のエンジニアにも内製開発のプロジェクトのメンバーとして加わってもらうことで、両者のシナジー効果が生まれ、品質の向上と開発期間の短縮、そしてコストの適正化を図ることができると判断しました。また、日テレITプロデュースが今後も自らが中心となって内製化を実現できる体制を作っていくために JBS のエンジニアから学び、社内に知見を蓄積していきたいとも考えました。

実際に報道支援システムを内製で開発した効果はありましたか。

内製化でシステムの開発を行った結果、従来の開発ベンダーに依頼した場合と比較して 1/2 程度の予算で済ませることができました。またシステムの品質も高く安定稼働しており、稼働後の保守費用においても、日テレ IT プロデュースの運用メンバーの対応範囲が増えたこともあり、メーカーに依頼した場合と比較して大幅に削減できたと感じます。業界を理解しているからこそ戦略を形にできること、そして人材のスキルもあがり社内に知見も蓄積できるようになりました。コストだけでなく、非常に大きなメリットを得られたと感じています。

【会社概要】
日テレグループの IT 戦略を担う日テレ IT プロデュース

日テレ IT プロデュースはグループでどのような役割を担っているのでしょうか。

日本テレビ放送網株式会社 ICT戦略本部担当局次長(兼)部長 ビジネスソリューションディビジョン ディビジョンマネージャー 隅田 哲氏

日本テレビ放送網株式会社 ICT 戦略本部担当局次長(兼)部長 ビジネスソリューションディビジョン ディビジョンマネージャー
隅田 哲氏

日テレ IT プロデュースは、日本テレビを中心とする日テレグループのユーザー系システムインテグレーターです。日本テレビと JBS の出資により設立されました。創業は 2006年となります。

社名の「プロデュース」には、「エンジニア一人ひとりがお客さまのビジネスプロセスを描き、最新の技術要素をインテグレートして、最適な IT ソリューションをプロデュースする会社でありたい」という思いが込められています。

設立当初は、小規模な業務システムや、ネットワーク、サーバーなどのインフラを設計・構築・運用することが主な業務でしたが、現在は報道支援システム以外にもテレビ局ならではのシステム開発・運用に携わっており、日テレグループの IT 戦略を内製により実現しています。

日テレ IT プロデュースによるシステム開発例

  • 編成・営業・放送を支える基幹システム
  • ERP パッケージベースの会計制作費システム
  • 駅伝・マラソンなどの生中継を支援する計測システム
  • ネット局や海外へのコンテンツ販売を支援するシステム
  • 視聴率システム
  • 選挙システム

【選定理由】
IT 戦略実現のビジネスパートナー JBS

なぜ、JBS と共同で日テレ IT プロデュースを設立することになったのでしょうか。

放送局向けのシステムは特殊なのでパッケージ化されているものがほとんどなく、基本的には自前で構築しなければなりません。その際、都度、外部ベンダーに放送局ならではの業務や情報を伝えていると手間や時間がかかり、最終的にはコストパフォーマンスやシステムの品質にも影響してきます。

そのため、放送局の業務はもちろん、日テレグループの業務を理解した上で、グループの IT 戦略実現を内製で担うシステムインテグレーターが必要だと考え、日テレ IT プロデュースの設立にいたりました。しかしながら、当時の私たちには人材もノウハウも十分ではありませんでした。そのため、技術力がありかつ信頼できるビジネスパートナーの存在が不可欠でした。

日本テレビ放送網株式会社 ICT戦略本部 ビジネスソリューションディビジョン 専門副部長 田上 由起子氏

日本テレビ放送網株式会社 ICT 戦略本部 ビジネスソリューションディビジョン 専門副部長
田上 由起子氏

2003 年、現本社ビル「日テレタワー」へと移転をした際に、さまざまなシステムの開発や改修を行いました。そのころから、JBS との付き合いがはじまったと聞いています。JBS は技術力が高く、大手ベンダーと比べてコストパフォーマンスにも優れ、短期間で高品質なシステムを構築してもらえることから、依頼する案件が急激に膨らんでいきました。

その過程で相互に強い信頼関係が築けたこと。独立系ベンダーなので特定のメーカーや製品、ソリューションに縛られず、常に先進的で最適な提案をしてもらえること。システム開発だけでなく、機器の手配や設置、運用など総合的に任せることができることなどから、JBS をビジネスパートナーとして、共同出資する形で日テレ IT プロデュースを設立しました。

情報システム部門の役割を新しい会社として立ち上げ子会社化するということは、経営にとっても非常に大きな決断でしたが、明確なミッションを持ち、グループにおける IT のスペシャリストとして事業を推進していくという強い意思の表れであったと考えています。

【今後の展開】
グループ全体に対するシステムとインフラのあり方を提案

今後の展開予定があれば教えてください。

株式会社日テレITプロデュース カスタマーサクセス部 副部長 村上 典明氏

株式会社日テレ IT プロデュース カスタマーサクセス部 副部長
村上 典明氏

日テレ IT プロデュースが目指しているのは「社会から存在を期待される企業」であり、高い志や夢を持って、自ら新しい価値を生み出すことのできる集団であることです。

これまで通り、放送局の業務内容に合わせた各種システムの開発内製化を強化するとともに、単に日テレグループ各社から依頼されたシステムを形にするだけでなく、ネット局やグループ全体に対するシステムとインフラのあり方を検討し、提案するような業務にも注力していきます。

さらに、番組制作の現場ではまだまだアナログな手法が根強く残っており、事業が多角化していく一方、むやみに人員を増やすことができる状況ではありません。そのようなさまざまな非効率を現場目線で改善していく DX の活用なども、IT のプロデューサーとして重要な役割だと考えており、積極的に改善に取り組んでいきたいと思います。

【JBS への期待】
ビジネスパートナーとして互いに補完し合える関係を

JBS への要望や期待があればお聞かせください。

設立当初は JBS からの出向社員が半数以上を占め、JBS に多くを頼らざるを得ない状況でしたが、今では人材の確保や教育にも力を注ぎ、おかげさまで 100 名を超える IT スペシャリスト集団に成長することができました。

これまでのさまざまなプロジェクトに参加してくれた JBS のエンジニアが、日テレ IT プロデュースの一員として常に同じ視点に立ち、課題意識を持ってチームに溶け込み、一緒に考え、行動してくれたおかげだと感謝しています。

世の中で DX が加速し、デジタル化が本格化していく流れの中で、これからも JBS に頼る場面は多いかもしれませんが、引き続きビジネスパートナーとして互いの強みや弱みを補完し合える関係を築いていければうれしく思います。

  • 2022年4月、株式会社日テレITプロデュースは株式会社日テレWands に社名変更しました。
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