ハイブリッドワーク環境で生産性向上と DX 推進事例

auカブコム証券株式会社

フリーアドレス採用とセキュアなハイブリッドワーク環境を実現
Azure Virtual Desktop を活用した 500台の仮想デスクトップを展開

auカブコム証券株式会社
業種 金融・保険
テーマ
  • DX・内製化
  • セキュリティ
  • リモートワーク
製品パートナー マイクロソフト

(左から)auカブコム証券株式会社 システム技術部 基盤グループ 相川 弘行 氏、部長 宮本 喜与士氏、高橋 知美 氏

ロケーション問わず従業員がどこでも活動できる
柔軟かつセキュアなハイブリッドワークを実現

インターネット専業の証券会社である auカブコム証券は、本社オフィスの移転にあたりフリーアドレスを採用することとなり、これを機にデスクトップ PC を廃止し、仮想デスクトップに移行しました。この基盤として活用したのが、DaaS(Desktop as a Service)型で提供される Azure Virtual Desktop(以下、AVD)です。パートナーに選任した JBS とともに導入プロジェクトを推進し、全従業員および協力会社の関係者を対象とした 500台の仮想デスクトップの展開を完了しました。これにより、従業員が場所を問わず業務を行える柔軟なハイブリッドワーク環境を整備するとともに、リモートアクセスに伴うセキュリティ課題も解決しています。

【会社概要】
「リスク管理追求型サービス」を特長とするインターネット専業の証券会社

auカブコム証券についてご紹介ください。

auカブコム証券は 1999年に設立し、2019年 12月に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と KDDI のジョイント・ベンチャーとして新たなスタートを切ったインターネット専業の証券会社です。

政府が推進する「資産所得倍増プラン」に合致する形で、内製システムを最大限に活用した「リスク管理追求型サービス」の提供を特長とし、iPhone と Android に対応したスマートフォンアプリの拡充にも注力しています。

【導入の背景】
リモートアクセスで課題を抱えていたデスクトップ PC を撤廃

AVD を導入した背景を教えてください。

auカブコム証券株式会社 システム技術部長 宮本 喜与士氏

auカブコム証券株式会社 システム技術部長
宮本 喜与士 氏

auカブコム証券は 2022年 12月に本社を霞が関ビルディングに移転しましたが、これにあわせて新オフィスでは従業員の席を固定しないフリーアドレスを採用し、デスクトップ PC を撤廃することになりました。コロナ禍以前から auカブコム証券では在宅勤務が広く普及していた事情もあり、従業員が場所を問わずに活動できるハイブリッドワークに柔軟に対応できる仕組みとして仮想デスクトップに注目しました。

デスクトップ PC を使っていた以前の環境では、どんな課題があったのでしょうか。

自宅や外出先など社外で仕事をする場合、オフィスの自席に設置されたデスクトップ PC に VPN 経由でリモートアクセスする方法をとっていました。当然、デスクトップ PC の電源が入っていないと使えないため、オフィスに電話をかけて誰かにスイッチを入れてもらうという非効率なオペレーションが頻発していました。コロナ禍ではオフィスにほとんど人がおらず、多大なタイムロスが発生することもありました。

さらに大きな問題として指摘されていたのがセキュリティ対策です。物理的にはデスクトップ PC を南京錠で固定していましたが、SSD の暗号化がなされていない PC も一部残っており、盗難対策が不十分でした。こうした物理 PC ならではのリスクを排除し、セキュリティの一元管理を実現する目的からも仮想デスクトップに舵を切りました。

【選定の経緯】
卓越した技術力だけでなく、金融業界ならではのセキュリティに対する豊富な知見も評価

数ある仮想デスクトップのソリューションの中で AVD を選んだ理由を教えてください。

DaaS については他ベンダーの製品も候補に挙がり検討しましたが、AVD を選定した決め手となったのは、すでに保有しているライセンスの有効活用です。auカブコム証券では Microsoft 365 を全社的に導入しており、そのライセンスを継承できるのは同じマイクロソフト製品である AVD のみとなります。

なお、オンプレミスの VDI についても検討しましたが、数十台規模のホストサーバーを導入しなければならず、初期費用やメンテナンスに多大なコストがかかることに加え、自前で運用管理にあたるには新たに仮想化ハイパーバイザーのスキルを習得する必要があり、作業負担が重いことから採用を見送りました。

JBS をパートナーに選任した理由を教えてください。

日本マイクロソフトとは毎月 1回定例会を行っているのですが、その場で AVD の提案とともに導入支援ベンダーとして JBS が推薦されました。

以前より JBS には、さまざまなマイクロソフト製品を導入する際に、サポートをいただいてきた経緯があり、auカブコム証券の業務やシステムを熟知しています。また、金融系の多くのシステム構築案件に携わってきた実績から、業界固有のセキュリティに対して豊富な知見を有していることも、心強いポイントでした。

【導入プロセス】
AVD の運用コストを最適化する電源管理用スクリプトを作成

AVD の導入プロジェクトはどのように進められたのでしょうか。

JBS と正式契約したのが 2022年 5月末で、これが AVD 導入プロジェクトのキックオフとなります。まず各部署から先行ユーザーを選抜し、仮想デスクトップを 25台に限定した環境下で同年 9月前半まで PoC を実施しました。そこから得られた実際の操作感や各アプリケーションの互換性、発生するコストなどの検証結果を受けて、従業員への展開を順次開始。少し時間がかかりましたが、同年 12月いっぱいで全従業員および協力会社の関係者の利用分を含めた仮想デスクトップ 500台の展開を完了しました。

auカブコム証券株式会社 システム技術部 基盤グループ 相川 弘行氏

auカブコム証券株式会社 システム技術部 基盤グループ
相川 弘行 氏

プロジェクトの途中では、さまざまな困難もあったのではないでしょうか。

検証段階で早々に発生したのが性能問題です。仮想デスクトップの処理負荷が想定よりも重く、従来のデスクトップ PC よりレスポンスが低下してしまいました。ですが、JBS のサポートを受けてチューニングを施すことで、なんとかこの問題を解決しました。

もう 1つ直面したのがコストの問題です。AVD をサブスクリプション(従量課金)で利用すると、料金がどんどん膨らんでしまいます。この問題解決に関しても JBS の多大な協力を得ています。各ユーザーの利用状況をモニタリングし、使っていないときは自動的にシャットダウンし、ログイン操作を行った時点で仮想デスクトップを起動する電源管理用スクリプトを作成することで、コストの最適化を図りました。

【導入効果】
柔軟なハイブリッドワークを支える仮想デスクトップ環境を実現

AVD の導入によってどんな成果が得られましたか。

auカブコム証券株式会社 システム技術部 基盤グループ 高橋 知美氏

auカブコム証券株式会社 システム技術部 基盤グループ
高橋 知美 氏

最大の成果は、新本社オフィスのフリーアドレスおよびハイブリッドワークに対応した仮想デスクトップ環境を実現できたことです。

OS のセキュリティパッチなどは AVD 側で遅滞なく適用され、各ユーザーの利用状況も一元的に監視や管理ができるため、セキュリティレベルも大幅に向上しています。

加えて BCP 強化にも貢献しています。仮想デスクトップなら、仮にオフィスが激甚災害に被災した場合でも業務継続が可能です。また法定点検や計画停電などでオフィスの電源が使えない際も、仮想デスクトップなら社外から利用が可能です。

なお、先ほど仮想デスクトップ 500台の展開を完了したと述べましたが、プロジェクトを開始した時点で想定していたのは 400台で、その後の計画変更により規模の拡大に至りました。仮にオンプレミスの VDI を導入していたとしたら、新たに数台のホストサーバーを調達するとともにネットワーク構成も変更しなければならず、このような柔軟な対応はできなかったと思います。

コスト削減の効果はいかがでしょうか。

従来のデスクトップと単純にコスト比較を行った場合、残念ながら AVD のほうが割高になります。ただしフリーアドレス化によって実現したオフィススペース(賃貸料)の削減、リモートアクセスに備えて常時電源を入れていたデスクトップ PC の電気代の節約、エンドポイント運用管理の省力化などの効果をあわせて考えれば、AVD もコストに見合ったメリットを発揮しています。

【今後の展望】
AVD 独自のマルチセッション接続機能の活用も検討

今後に向けた計画や構想をお聞かせください。

AVD の運用コストに関しては、さらに最適化を進めていく必要があると考えています。実現手段の 1つとして検討しているのが、Windows 10/11 に対するマルチセッション接続の機能です。各ユーザーの利用状況を継続的にモニタリングして分析し、利用頻度の少ないユーザーや、定型的なアプリケーションのみで業務に対応できるユーザーをマルチセッション接続に集約することで、コストを削減することが可能となります。

また BCP 強化について、将来的には Microsoft Azure の東日本と西日本の 2つのリージョンで AVD 環境を冗長化し、DR(災害復旧)体制を構築することも構想しています。

【JBS への評価】
Microsoft Teams を通じて AVD 導入プロジェクト全般をサポート

JBS の導入支援・サポート体制に対する評価をお聞かせください。

JBS は、Microsoft Teams を利用した auカブコム証券のコミュニケーションネットワークにグループメンバーとして参加し、AVD の導入プロジェクト全般のサポートをしてくれました。さまざまな問い合わせや情報提供の要望に対して、いつも迅速なレスポンスで対応していただき大変助かりました。

JBS は、Microsoft Teams を利用した auカブコム証券のコミュニケーションネットワークにグループメンバーとして参加し、AVD の導入プロジェクト全般のサポートをしてくれました。さまざまな問い合わせや情報提供の要望に対して、いつも迅速なレスポンスで対応していただき大変助かりました。

仮想デスクトップの展開は一通り完了しましたが、今後はこの環境を利用して、ユーザーのさらなる生産性向上や DX を推進していきます。そうした中で、例えば Microsoft 365 Copilot など生成 AI の活用にも関心を持っており、引き続き JBS には親身なサポートと提案を期待しています。

JBS 担当者からのコメント

金融・保険事業本部 金融1部 1課 渡邉 愛莉

本社オフィス移転という重要な機会に、auカブコム証券さまの業務改善に貢献できたこととてもうれしく思います。auカブコム証券さまのご協力があってこそのプロジェクトの成功だと感じております。 今後は AVD のコスト最適化、BCP 強化について引き続きご支援させていただくとともに、その他の分野でもお力になれるよう尽力してまいります。

金融・保険事業本部 金融1部 1課
渡邉 愛莉

クラウドソリューション事業本部 ハイブリッドクラウド4部 1グループ  中野 秀宣

この度は auカブコム証券さまのお力添えにより、無事に完遂できましたこと、感謝申し上げます。auカブコム証券さまのビジネス発展への貢献はもちろんですが、お打ち合わせの際に頂戴しました”また、面白い仕事をしましょう!” のお言葉とご期待に添えるよう、尽力してまいります。

クラウドソリューション事業本部 ハイブリッドクラウド3部 1グループ
中野 秀宣

クラウドソリューション事業本部 ハイブリッドクラウド4部 1グループ  杉山 俊輔

この度は、auカブコム証券さまが目指す柔軟性とセキュリティを備えたハイブリッドワーク化の計画に貢献できたことを大変光栄に思っております。スケジュールが非常にタイトで、さまざまな課題が発生しましたが、システム技術部の皆さまのご協力により、このプロジェクトは成功裏に完遂しました。そのことに心から感謝しています。私たち JBS は、今後も auカブコム証券さまのビジネスをサポートするために努力を続けて参ります。

クラウドソリューション事業本部 ハイブリッドクラウド3部 1グループ
杉山 俊輔

auカブコム証券株式会社

代表者:代表取締役会長兼社長 二宮 明雄
本社所在地:〒100-6024 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング24F
設立:1999年11月19日
資本金: 71.96億円 (資本準備金119.13億円)
事業概要:インターネット専業の証券会社。取扱商品は現物株式、信用取引、外国債券、プチ株®(単元未満株)、投資信託、先物オプション取引、シストレ FX、店頭 FX、くりっく365、取引所CFD(株 365)など。

2023.11.20公開

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